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防衛省、血液製剤製造へ 有事負傷備え、器材公開


防衛省、血液製剤製造へ 有事負傷備え、器材公開 凍結赤血球製剤を製造するための器材を紹介する防衛省担当者=19日、東京都の自衛隊中央病院
この記事を書いた人 Avatar photo 明 真南斗

 防衛省が有事を想定して負傷した隊員に使う血液製剤を独自に確保・備蓄しようとしている件で、同省は19日、東京都内の自衛隊中央病院で、血液製剤を製造するための器材を報道陣に公開した。

 防衛省が輸血戦略を検討するために設置した有識者検討会は本年度内に同省への提言を示す。自衛隊が独自に備蓄した血液製剤は、沖縄など島しょ部での使用も想定している。

 今回公開されたのは、2023年12月に自衛隊病院へ納入された器材。23年度予算で購入経費として約9千万円が計上されていた。今月から自衛隊病院内で器材の操作教育・訓練が始まる。

 政府は22年末に閣議決定した安全保障関連3文書で、血液製剤の確保・備蓄に取り組む考えを示していた。防衛省が血液製剤を製造するには薬事承認の取得などの手続きが必要で、厚生労働省と協議を続ける。

 今回納入された器材は採取した血液から白血球や血漿(けっしょう)を取り除いた「凍結赤血球製剤」を製造するもので、国内で血液製剤を製造・販売する日本赤十字社でも使用している。赤血球製剤は酸素を体内の組織に運ぶ赤血球が不足している場合に用いられるもので、患者が必要とする血液成分のみを用いる「成分輸血」の一つ。

 これとは別に、米軍は「低力価O型全血(LTOWB)」と言われる、採取された血液をそのまま用いる「全血輸血」を採用している。この米軍の手法を念頭に、自衛隊は自衛隊員の血液を解析する研究を進めている。将来的には米軍との相互運用も想定している。 

(明真南斗)