prime

【深掘り】「検討ずるずる、『県議選後』に一気に」警戒の声も うるま陸自訓練場計画 沖縄


【深掘り】「検討ずるずる、『県議選後』に一気に」警戒の声も うるま陸自訓練場計画 沖縄 陸上自衛隊の訓練場整備計画が取りざたされているゴルフ場跡地=6日、うるま市石川(小型無人機で大城直也撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 うるま市石川への陸上自衛隊訓練場整備計画を巡り、政府が土地を購入した上で訓練場として使わないという選択肢にまで「幅を広げて」(防衛省関係者)見直しを進めている。ただ、県内で訓練場を増やすことが検討の前提条件になっており、代替の訓練場所の確保など検討作業は困難を極める。2024年度予算案に計上した土地取得費を維持する姿勢は崩しておらず、国の動向に地域では期待と警戒の声が交錯する。

 地元の石川地域では保革を超えて訓練場整備計画への反発が強まっている。27日に自民党県連の島袋大幹事長が白紙撤回を求める考えを表明するなど県全体に波及した。

 「ここまで来たら何かしら考えざるを得ない」。防衛省関係者の一人は、石川地域や県議会での動向を踏まえ、訓練場以外の用途検討も選択肢に加えた背景を説明した。木原稔防衛相が来県時、訓練場と県立石川青少年の家の距離が「近い」と発言したことを念頭に「この距離で訓練は『まずい』と大臣も感じている」と話した。

 一方、土地買収費として数十億円を盛り込んだ24年度予算案そのものは見直さない公算が大きい。政府関係者は「ただでさえ(自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で)国会が混乱する中、今更土地取得費を取り下げれば、収拾がつかない大問題になる」と説明。「『土地取得も諦める』という意味での白紙はない」と語った。

 こうした政府側の意向は自民県連も織り込み済みだ。自民県議は「今まさに国会で審議されるタイミングで、予算計上自体を取りやめろというのはありえない」と語り、用地取得が見直される可能性を否定する。県連が表明した「白紙撤回」は整備計画に対する反対ではなく、あくまで「強行するのではなく、いったん、立ち止まるべきだとの警鐘」と強調した。

疑念

 防衛省は県内に駐屯する陸自第15旅団を規模の大きい師団にすることに伴って訓練が増えるため、訓練場増設が必要だと説明してきた。3月にはうるま市の勝連分屯地に地対艦ミサイル部隊が配備される計画も踏まえ、自衛隊関係者は「訓練は倍以上になる」と見通した。

 別の防衛省関係者は「(購入後の土地を)訓練場として使わない案を実行に移すにしても、先に訓練場所の不足という根本問題を解決するめどをつけなければならない」と述べた。

 国の動きに県関係者は「『検討』をずるずる続け、県議選後に一気に動く可能性もある」として、結局は訓練場として使用する可能性に警戒感を示した。そうなった場合、「その行動自体が(国の)信用を落とすことになる」とし、動向を注視する姿勢を示した。

 石川地区自治会長連絡協議会の與古田ゆかり会長は「白紙撤回を求める動きが石川地区を越えて広がり、政府も計画を見直さざるを得ない状況になっている」とうなずいた。一方、ゴルフ場跡地が購入される限り訓練場が建設されないという保証はなく、不信感はぬぐえない。「はっきりと計画が撤回されるまで、白紙撤回を求める活動を続けていく」と力を込めた。

(明真南斗、佐野真慈、知念征尚、石井恵理菜)