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【深掘り】計画断念求める声、島ぐるみの様相 沖縄県議会が与野党一致で「国に異議」 うるま陸自訓練場、白紙撤回で意見書 沖縄


【深掘り】計画断念求める声、島ぐるみの様相 沖縄県議会が与野党一致で「国に異議」 うるま陸自訓練場、白紙撤回で意見書 沖縄 陸上自衛隊の訓練場新設が計画されているゴルフ場跡地=2月6日、うるま市石川(小型無人機で大城直也撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 沖縄県議会が7日、うるま市石川への陸上自衛隊訓練場整備計画について、白紙撤回を求める意見書を全会一致で可決した。県議選まで3カ月。各党の思惑が交錯する中、安保3文書の閣議決定を背景に南西諸島の防衛力強化を進める国に、県議会が初めて与野党一致で異議を唱えた。

 整備計画を巡っては、うるま市内の全63自治会が加盟する市自治会長連絡協議会が全会一致で反対している。当初は賛否を示さなかった中村正人市長も「計画断念」に踏み込んだ。意見書可決は、地元を中心に広がり続けている「反対」の声に政権与党の地方組織である自民県連が押されて「白紙撤回」を求めざるを得なくなったことが大きく影響した。

 県議会は6月には改選を控える。「県政奪還」を掲げる自民県連にとって、県議選での過半数奪取は「最重要課題」(自民県議)だ。本来、防衛力整備を進める政権を支える立場だが、訓練場整備計画が争点になりつつある中で「断念までは言えない。ただ、これ以上の逆風にさせないための白紙撤回だ」(同)と表明の狙いを明かす。

 一方、県議選を見据えたのは与党も同じだ。自民県連の白紙撤回表明後、間髪入れずに意見書案を準備した。当初案では自民側が踏み込まなかった計画「断念」も盛り込んでいたものの自民側も乗れる案を目指し、早々に削除した。地元の意向尊重を前提としつつも、念頭にあったのは辺野古新基地問題だ。

 これまで同様に県議選の最大争点になる辺野古新基地問題で、建設反対を訴えてきた与党側は苦境に立たされている。

 大浦湾側の軟弱地盤改良工事に向けた沖縄防衛局の設計変更申請を巡る代執行訴訟は県の敗訴が確定し、工事が進む。与党は工事阻止に向けた具体的な対抗手段が見いだせないまま選挙戦に臨まざるを得ない状況だ。

 その中で、訓練場計画に対し「白紙撤回」を求める動きは大きな政治のうねりとなった。与党県議は「民意が政治を動かした結果」とうなずく。辺野古問題では、県知事選や県民投票などで繰り返し示されてきた民意を顧みずに国は工事を強行した。訓練場の白紙撤回要求は「民意が軽んじられる風潮に一石を投じるものだ」と意義づけた。再び民意の力を県民が実感する契機と捉え「意見書の成立に向けて自民側の意向を最大限、取り入れた」と明かした。

 自衛隊を巡っては県議会でもさまざまな評価がある中で、意見書が全会一致で可決された意味は重い。地元のうるま市議会でも19日に意見書が可決される見込みで、国が訓練場整備への前のめりな姿勢を早急に転換し、地元の声に向き合うのか注視される。今、訓練場断念を求める声は島ぐるみの様相だ。

(佐野真慈、知念征尚)