自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件の関係議員に対する処分が始まった。党員資格停止の場合、党の会議出席を禁じられ、政策の党内調整に関与できない。党本部から支部への資金交付は停止される。比較的軽い処分でも地元の風当たりはきつい。党役職停止処分の穴を埋める人事は滞っている。
おわび行脚
「あいさつしても、そっぽを向かれる」「『説明責任を果たせ』と罵倒される」―。処分を受けた安倍派衆院議員の秘書は、地元でのおわび行脚の様子を力なく語る。支える議員は連続当選4回を果たしてきたが「次は今までのようにいかない。有権者の反応は厳しい」と焦りを募らせる。
自民は安倍派、二階派の計39人に、党則に基づく処分を4日決定した。離党勧告処分を受けた安倍派幹部2人のうち塩谷立氏が再審査を請求。他の処分者への対応が遅れ、執行部は15日から順次処分の手続きに入った。
年1200万円
今回の処分は重い順に離党勧告、党員資格停止、党役職停止、戒告が適用された。39人以外で政治資金収支報告書に不記載があった残り45人は、党則に基づかない幹事長注意となった。
中でも安倍派幹部だった3人に下された党員資格停止は厳しいと言われる。下村博文、西村康稔両氏に1年、高木毅氏に6カ月が科された。
党の選挙区支部長の資格を取り消され、党から交付されてきた活動資金はストップする。一人は周辺に「年間1200万円がゼロになる。頭が痛い」と不安を漏らす。処分期間中に選挙になれば党公認は得られない。
党が開くあらゆる会議にも出席できなくなる。とりわけ政務調査会の部会や調査会は地元向けのアピール機会でもあった。だが15日以降、開催の案内が途絶え、出席はかなわなくなった。
当該議員は「処分前と大きく変わってしまった」と寂しさを口にした。
続く空白
大量処分を受けた党人事も宿題となる。党役職停止1年の二階派幹部、林幹雄氏は経理局長を解任されたが、後任は決まっていない。党役職停止は1年か6カ月が計17人に科され、複数の役職で後任未定が続く。党幹部は「いつまでも空白ではいけない」と語り、近々人選に入る考えだ。
39人のうち戒告は17人。文書の注意のみで「実害はない」(中堅)との声が漏れる。不記載額が500万円未満で幹事長注意となった議員の中には、地元で「裏金をもらっていたのに処分から逃げた」と批判を浴びるケースもあるという。
13~15日の共同通信世論調査で、処分が「軽い」との回答が65・5%に上った。安倍派ベテランは「やはり処分は不十分だった。まだまだ尾を引く」とため息をついた。
(共同通信)