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自治体退職 10年で2倍 若手中心、業務増影響か


自治体退職 10年で2倍 若手中心、業務増影響か 自治体職員(一般行政職)の普通退職者数推移
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 安定した収入で人気だった自治体職員の退職が止まらない。総務省集計によると、教員や警察などを除く一般行政職のうち、2022年度に主に自己都合で仕事を辞めたのは1万2501人。13年度は5727人で、約10年で2・2倍となった。待遇への不満や業務量の増加が影響しているとみられる。30代までの若手が全体の3分の2を占め、住民サービス低下や組織弱体化が懸念される。
 総務省の「地方公務員の退職状況等調査」から、定年や懲戒免職、死亡、国・他自治体への出向などを除く「普通退職者」の人数を抽出した。13年度以降の推移を見ると、コロナ禍で経済が冷え込んだ20年度を除き、おおむね数百人のペースで増加している。21年度になると増加幅が広がり、1万500人と初めて1万人を超えた。
 22年度の普通退職者の年齢別は、30歳未満が4244人で13年度比2・7倍、30歳以上40歳未満が4173人で同3・1倍となり、若手の増加が鮮明だ。自治体の種類別では、都道府県や一般の市区町村が同2・3倍だったのに対し、相対的に人員が多く好待遇な政令指定都市は同1・6倍にとどまった。
 総務省や複数自治体の関係者によると、民間と同様、若い世代ほど転職へのハードルは低い。好調な経済情勢や人手不足による売り手優位、終身雇用意識の薄まりなどが背景にある。加えて年功序列やデジタル化の遅れといった役所の旧態依然の働き方、民間就職した同期と比べて低い給与への不満もあるという。
 自治体関係者は「根本には人員減と業務量増大があり、新型コロナウイルス対策の繁忙が決定的だった」と話す。退職者の業務カバーで残りの職員の負担が増し、さらなる退職につながる「悪循環」が起きているとも指摘した。
 自治体の一般行政職 自治体職員の職種の一つ。採用試験に合格後、政策の企画立案や窓口業務など主に事務を担い、さまざまな部署を渡り歩く。総務省の給与実態調査によると、2022年4月時点の総数は約87万人で、全国にいる自治体職員の3割を占める。自治体業務は幅広く、ほかに警察職、教育職、消防職、医療職、税務職などがある。