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国民スポーツ大会見直し論 都道府県に重い負担 競技団体は存続訴え


国民スポーツ大会見直し論 都道府県に重い負担 競技団体は存続訴え 鹿児島国体開会式で入場する選手団=2023年
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 都道府県の持ち回りで開かれる国民スポーツ大会(旧国民体育大会)を巡り、多くの知事から在り方を見直すよう求める意見が相次いでいる。最大の理由は重い財政負担。開催経費は数百億円に上り、開催地でなくとも選手派遣で1億円を超えることもある。廃止論や、ブロック単位での開催の提案があり、競技団体からは「続けてほしい」との声が上がった。

 829億円

 「経費は何百億円という単位。それが県民の税金だ」。鳥取県の平井伸治知事は11日の記者会見で不満をぶちまけ、抜本的改革の議論を求めた。8日に全国知事会長の村井嘉浩宮城県知事が「廃止も一つの考え方」と発言して以降、各知事が持論を展開している。
 2022年の開催地だった栃木県によると、経費は総額約829億円で施設改修費が最も大きかった。これに対し国の補助金は約4億5千万円。岩手県の達増拓也知事は「国が予算を確保しなければ今まで通りの開催は難しい」と指摘した。村井氏によると、選手の派遣費用も都道府県負担。宮城の場合は昨年の鹿児島大会が1億円超で、一昨年の栃木大会は約6千万円だったという。
 国スポの前身である国体は1946年、荒廃した日本でスポーツを通じて国民に勇気と希望を与えるのを目的に第1回が開かれた。それから80年近くが経過。地方のスポーツ振興も目的に掲げているが「国スポは(既に)一定の役割を果たした」(三重県の一見勝之知事)との意見もある。

 ブロック開催

 一方で、神奈川県の黒岩祐治知事は「多くの選手が目標にしている。持続可能な形で継続できるよう検討するべきだ」と強調。栃木県の福田富一知事や、今年の開催地である佐賀県の山口祥義知事も安易に廃止に傾くべきでないと主張する。
 茨城県の大井川和彦知事や大阪府の吉村洋文知事は、東北、関東などブロック単位の開催を提案する。過去の国体では、同じ年に開催を希望した県が複数あったため共催した例もある。
 村井氏は19日、知事会としての提言をまとめて一定の方向性を示す考えを示した。国、都道府県と大会を共催する日本スポーツ協会は検討部会を立ち上げ、国スポの在り方を検討する方針だ。

 活躍の場

 競技団体側の心境は複雑だ。岩手県ハンドボール協会副会長で、県職員として国体運営にも携わった中島昭博さん(63)は「メジャーでない種目にとっては、国スポはありがたい活躍の場だ」と存続を訴える。
 ただ財政面を理由にしたリニューアルの必要性には理解を示す。ブロック開催を例に挙げ「開催地の負担を低減しながら開く形を模索してほしい」と語った。