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戦前移民の第一級資料


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 琉球大学国際地域創造学部の宮内久光教授(地理学・移民研究)の話
 ハワイの沖縄県系人と県系社会に関して、戦前期に発行された書籍は山里勇善編「布哇之沖縄県人」(1919年)が知られており、これを用いて各学問分野で移民研究が進められてきた。
 日米開戦直前の41年に本書(布哇沖縄県人発展史)が刊行されていたこと、戦災により本書が1冊しか現存されていないだろうことが、県立図書館による移民資料収集調査で初めて明らかとなり、とても驚いている。
 600ページにも及ぶ本書は、當山久三のあっせんにより沖縄県から初めてハワイに移民が到着した、1900年からの約40年間にわたる沖縄県系人と県系社会組織の活動史のほか、ハワイ全域の1世の伝記が約600人、人名録には約3500人が掲載されるなど、資料面が非常に充実していることが特徴だ。
 本書は戦前期の沖縄移民研究をする上での第一級の基本書籍となり、今後、「布哇之沖縄県人」に加え、本書の記述を読み取り、資料を分析することで、多くの研究成果が発表されることが期待できる。