有料

自民政治の機能不全


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 衆院3補欠選挙は岸田文雄首相に厳しい民意を突き付けた。敗因は、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件への生ぬるい対応だけではない。物価高や地方の疲弊に有効な手だてを講じない自民党政治の機能不全に、有権者が背を向けたと捉えるべきだ。
 東京15区、島根1区、長崎3区の3選挙区に共通するのは政治とカネを巡る不祥事が絡んだ点だ。自民は告示前に裏金事件の関係議員ら39人を処分したが、実態解明が不十分なまま幕引きを狙った印象は否めない。政治資金規正法改正の自民案は議員への罰則適用要件が限定的で、政治資金パーティー収入の透明化や政策活動費の在り方には案すら示さなかった。
 一方で人口減少問題は地域社会に深刻な影を落とすが、政権が法案を提出した少子化対策は財源論が生煮えなままだ。物価変動を考慮した1人当たりの実質賃金は、2月の統計で前年同月からのマイナスが23カ月連続。「賃上げ経済」はかけ声倒れとなっている。
 首相は「政治の信頼回復へ先頭に立つ」と訴えてきた。ならばなぜ自民は島根1区にしか候補を擁立できなかったのか。求められるのは勇ましい言葉ではなく、行動と成果だと自覚すべきだ。