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問題解決から寄り添いへ 「就労」中心を転換


問題解決から寄り添いへ 「就労」中心を転換 ひきこもりの人や家族の支援
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 ひきこもりの人と高齢の親が困窮する「8050問題」の深刻化に伴い、自治体の支援は従来の就労といった「問題解決型」から、継続的にかかわる「寄り添い型」への転換が求められている。厚生労働省は2024年度に策定する指針に具体的な支援ポイントを盛り込み、自治体の取り組みを後押ししたい考えだ。
 NPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」(東京)が今年1~3月、会員らを対象に実施した調査では、本人の85%、家族の78%が「何らかのサポートが必要」と回答した。しかし、実際に支援が継続しているのは本人27%、家族39%のみだった。
 藤岡清人共同代表は「自治体に相談しても『その先』が見えず、諦めて足を運ばなくなったのではないか」と分析する。
 今後、拡充していくべき支援については(1)「親亡き後」をどうするか(2)家族支援(3)選択できる複数の居場所(4)つながり続ける支援―などの回答が上位を占めた。
 国や自治体の支援は長年、就労に重点が置かれてきたが、ニーズは多岐にわたることが明らかになった。
 東京都江戸川区は15歳以上を対象に行った全世帯調査で、ひきこもり状態の人が少なくとも7919人に上るとの結果を受け、23年11月に「ひきこもりサポート条例」を制定。
 当事者たちの声を反映し、(1)居場所に併設した駄菓子屋での就労体験(2)インターネット上の仮想空間「メタバース」を活用した居場所(3)15分の超短時間でも働ける仕事紹介(4)ひきこもりの人と家族のための対話交流会―などを行っている。
 しかし、自治体によって取り組みには濃淡があり、相談窓口が未設置の市区町村も多い。厚労省は新たな指針で、本人や家族に寄り添った支援の必要性を明示。相談を受けた後の支援の流れ、SNSなどのデジタル技術活用、民間団体との連携などを盛り込む。
 さらに指針との“両輪”として、自民党議連を中心に支援のための基本法制定を模索する動きも出ている。
 基本理念は「本人や家族の意思を尊重し、生きがいや希望を持って自律的に暮らせるようにすること」。財政面を含めて自治体の取り組みを後押しし、専門性を持った人材の養成などが期待されている。