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【深掘り】米大使、「民間空港」使用の実績づくりか 与那国・石垣を視察へ 県は「軍事利用」拡大懸念 沖縄


【深掘り】米大使、「民間空港」使用の実績づくりか 与那国・石垣を視察へ 県は「軍事利用」拡大懸念 沖縄 エマニュエル駐日米大使の訪問で使用申請が出されている与那国空港=2022年11月
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米軍が与那国空港と新石垣空港の使用を県に届け出た。複数の関係者によると、ラーム・エマニュエル駐日米大使が視察で先島諸島を訪れる方向で調整している。実行されれば与那国空港には米軍機が初めて飛来することになる。軍事利用の拡大を懸念し、県関係者には警戒感が広がる。 

 政府関係者の一人は与那国島を離着陸する民間便が限られていることを踏まえ「日程の都合上であって米軍機を使うことに深い意味はないのではないか」と話した。実際、日本の防衛相らの視察でも自衛隊機を使うことはたびたびある。

 一方、ある防衛省関係者は「民間空港を使ったという実績づくりも狙っている」とみる。「今後も空港や港湾を使うために地元に根回しする意味があるのだろう」と語った。23年9月に石垣港へ米掃海艦が寄港し、出港した約3時間後、エマニュエル氏はX(旧ツイッター)で「絆の強化と安全保障の確保です。画期的で、日米同盟の強じんさと活力を如実に示す」と投稿していた。

 米政府高官の先島訪問は、軍事色を帯びる傾向にある。それを証明したのは、2007年6月に在日米海軍の掃海艦2隻が与那国町の祖納港へ初寄港した後、当時のケビン・メア在沖米総領事が本国に打った公電だ。メア氏は「海峡有事の際に、対機雷作戦の拠点になり得る」と極秘に報告していた。

 さらに、祖納港の深さを挙げ「掃海艦4隻を一度に収容できる」「与那国空港を利用し、ヘリコプターを掃海艦支援に使えば、台湾に最も近い日本の前線領土として拠点になり得る」としていた。

 その後も09年に石垣港、10年に宮古島市の平良港に掃海艦が入るなど米軍は当時から特に先島地域のインフラ利用を重視してきた。

 有事の際に自衛隊や海上保安庁による利用円滑化を前提に、特定の空港や港湾を優先的に整備する「特定利用空港・港湾」。日本政府は4月に沖縄県内の石垣港、那覇空港を含む16カ所を選定したが、与那国空港、新石垣空港も候補に挙がっていた。

 2空港の使用を届け出た米軍に対し県は、民間空港の使用自粛を改めて求めた。県関係者の一人は、エマニュエル氏来訪が目的との情報に「軍用機で来る必要があるのだろうか」と語り、警戒感を示した。 

(明真南斗、知念征尚)