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SDGs債で生物保全 全国自治体で広がる


SDGs債で生物保全 全国自治体で広がる 自治体発行のSDGs債
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関連し、自治体の発行する「SDGs債」が、生物多様性の保全に一役買っている。この債券で調達する資金の一部は特別天然記念物のトキやコウノトリの生息環境の整備に充てられ、企業など投資家の需要も旺盛だ。海洋環境の改善など活用の幅も広がりつつある。
 石川県が2月に発行した債券は、トキの餌場となる水田の整備などを資金の使途に盛り込んだ。同県は本州で最後にトキが生息していたことで知られ、担当者は「トキを再び羽ばたかせようと取り組んできた経緯があり、目玉事業の一つとした」と強調した。
 コウノトリの最後の繁殖地となった兵庫県は2022年度から2年連続でコウノトリを増やす事業を盛り込んで債券を発行。22年度は調達した計200億円のうち200万円を水場となる浅瀬や餌場作りに充てた。
 自治体として初めて海洋資源に焦点を当てたのが、岩手県が23年に発行した債券だ。稚魚のすみかや産卵場所となる藻場の整備を通じ、豊かな漁場を将来に残すことを目指す。
 みずほ証券サステナビリティ戦略開発室の熊谷直也さんは「生物多様性の保全に企業が単独で取り組むのは難しい」と指摘する。SDGs債は購入した企業名が自治体のホームページなどで公表され、活動を支援する姿勢を消費者にアピールできるのも需要を支える一因となっている。