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憲法施行77年 同性婚、別姓議論進まず 変わらぬ政治に反発強く    


憲法施行77年 同性婚、別姓議論進まず 変わらぬ政治に反発強く     東京・渋谷をパレードする「東京レインボープライド2024」の参加者=4月
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 個人の尊重と法の下の平等をうたう日本国憲法は3日、施行から77年となった。家族や夫婦の在り方は多様化し、同性婚を認めない現行法の規定は違憲とした訴訟が各地で起き、世界で日本だけが義務付ける夫婦同姓に経済界も強く異を唱える。制度の変更を求める声は高まる一方だが、国会の議論は進んでいない。「なぜこんなに待たせるのか」。変わらない政治に反発が強まっている。

初判断
 「結婚の自由をすべての人に」。4月下旬、LGBTQなど性的少数者や支援者による「東京レインボープライド2024」が東京都内で開かれた。パレードには虹色の旗を手にした約1万5千人(主催者発表)が参加。同性パートナーと共に行進した香川県三豊市の田中昭全さん(46)は「社会は確実に変わっているが国は変わらない。一刻も早く同性婚を認めるべく動いて」と訴えた。
 全国5地裁で起こされた同性婚訴訟のうち、初の控訴審判決が3月、札幌高裁で言い渡された。
 「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と「婚姻の自由」を定めた憲法24条1項について、高裁は同性間の婚姻も異性間と同様に保障しているとの初判断を示し、関連規定は違憲とした。
 日本は先進7カ国(G7)で唯一、同性婚や国レベルのパートナーシップ制度を導入しておらず、岸田文雄首相も否定的な考えだ。昨年2月の衆院予算委員会で、その理由を「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と答弁。札幌高裁の違憲判決後も、同種訴訟が継続しているなどとして「引き続き判断を注視したい」と述べた。

薄氷の上
 共同通信社が今月1日にまとめた憲法に関する世論調査では、同性婚を認める方がよいと答えた人は73%、選択的夫婦別姓に賛成するとの回答も76%に上った。
 夫婦別姓を認めない法規定は、個人の尊重などを定める憲法に違反するとして3月、男女12人が別姓で婚姻できる地位の確認などを求めて東京、札幌両地裁に提訴した。
 「慣れ親しんだ名前を変えるのも、相手に強制するのも嫌だった」
 都内の黒川とう子さん(51)=仮名=は17年間、事実婚関係にある根津充さん(50)=同=と原告に名を連ねた。
 姓を変えることを考えると、喪失感に襲われた。急に手術を受けることになったら、相手は同意書にサインできるのか、遺産相続はどうなるのか…。不安は尽きず「ずっと薄氷の上を歩いているような感覚」と語る。

棚上げ
 法相の諮問機関の法制審議会は1996年、選択的夫婦別姓制度を盛り込んだ民法改正要綱案を答申したが、保守系議員の反対などで法案は提出されず、四半世紀以上も棚上げされたままだ。
 政府は旧姓の通称使用拡大を進めるが、ビジネス現場で海外渡航の手続きに支障が出るなど、「キャリアの分断や不利益が生じている」と指摘する声が上がる。今年3月、企業経営者らが選択的夫婦別姓の導入を求める要望書を政府に提出し、経団連や経済同友会の担当者も同行した。
 立命館大の二宮周平名誉教授(家族法)は、同性婚や夫婦別姓を求める人々が不安や喪失感にさいなまれず、安心して暮らすために「婚姻を認める必要があり、幸福追求権として保障されるべきだ」と指摘する。「社会の変化を踏まえない固定的な考え方は妥当性を欠く。国は家族の多様化を受け止めて議論を進めてほしい」と注文した。