有料

談合防止へ 公取委が指針 効果事例、企業に配布


談合防止へ 公取委が指針 効果事例、企業に配布 最近の主な談合・カルテル事件
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 談合やカルテルを未然に防ごうと、公正取引委員会がコンプライアンス(法令順守)体制の整備に活用できるガイドラインを作成し、企業に配布している。過去に独禁法違反で排除措置命令を受けた719社を対象にアンケートを実施、効果があったとする事例をふんだんに盛り込んだ。意図せずライバル社と情報共有する「うっかり談合」の防止にも有効だとしている。80ページにわたる「実効的な独占禁止法コンプライアンスプログラムの整備・運用のためのガイド」で、「社内ルールの整備・運用」「独禁法に関する監査」などの項目ごとにチェックポイントや各社の実践例を列挙した。
 対策による効果にも言及しているのが特徴で、「違反行為を見過ごした者も懲戒処分対象であることを規定に明記したところ、上司と部下でコミュニケーションを取るようになった」「経営トップが『コンプライアンス違反による利益は1円も要らない』とのメッセージを発信した結果、社内のコンプライアンス意識が高まった」などと具体的に紹介している。
 頭ごなしに「危ないから駄目」と営業担当者に注意すれば相談されなくなる恐れがあるため、収益を上げる方策を一緒に考えるようにしているとの法務担当者の声も掲載。違反を自主申告すれば課徴金が免除、減免される課徴金減免制度(リーニエンシー)を社内に応用し、違反を告白した社員の処分を軽くする制度も効果的だとした。
 「受注調整から公取委の処分まで一連の出来事をドラマ化した」などと、社内研修の充実を図っているとの声もあった。
 公取委が今になって談合防止の「いろは」とも言える対策をまとめた背景には、電力大手によるカルテルや東京五輪談合事件など、大企業が絡む大型の独禁法違反事件が相次いでいる現状がある。一方、中小を中心に独禁法違反を防ぐマニュアルを策定していない企業も多く、早急な対策が必要だと判断した。
 公取委でかつて審査局長を務めた田辺治白鷗大教授(経済法)は現職時、「この程度で談合になるとは思わなかった」という企業側の声を多く聞いたと明かす。上層部に忖度(そんたく)して違反に関与した例も多かったといい「反省を踏まえて再発防止に取り組んだ企業の声は貴重だ。有効に使われると思う」と話した。