有料

首相「改革」へ募る焦り 会期末控え自公で温度差 政治資金規正法改正


首相「改革」へ募る焦り 会期末控え自公で温度差 政治資金規正法改正 政治資金規正法改正を巡る自民党の現状
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 岸田文雄首相が、裏金事件を受けた政治改革の実現へ焦りを募らせている。政治資金規正法改正を後半国会の最重要課題と位置付けるが、自民、公明両党の間では温度差があり、与党案策定は大型連休明けにずれ込んだ。6月23日の会期末を控え、野党が「自民の主張は改革もどきだ」と批判を強める中、首相は打開策を見いだそうと外遊から帰国早々、自ら動き出した。

本気度

「帰国当日にも自民党政治刷新本部メンバーと面会し、改革の方向性を確かなものにしていきたい」。日本時間5日朝、訪問先のブラジルで行われた内外記者会見。首相は連日続く公務への疲れも特に見せず、改革への思いを淡々と口にした。その言葉通り、6日午後2時50分に羽田空港に着くと公邸へ直行。午後4時には、党政治刷新本部で法改正に向けた実務を担う鈴木馨祐、大野敬太郎両衆院議員を呼び、約1時間意見交換した。連休最終日の異例の対応で「本気度」を示してみせた格好だ。
 実際、首相と実務者の協議を踏まえ、自民は政党から政治家個人に支出し使途公開の義務がない政策活動費に関し、公開する検討に入った。
 これまでは法改正を巡り、自民の消極的なスタンスが目についていた。意見集約に手間取り、具体案をまとめたのは、主要各党で最も遅い4月23日。裏金事件で1月に安倍派議員らが立件されてから3カ月以上が経過していた。今も党内では「遅い」(中堅議員)との苦言が絶えない。

低姿勢

 具体案の内容も問題を抱える。例えば政治資金パーティーの券購入者の公開基準額を巡り、自民は当初、現行の「20万円超」の引き下げに慎重で、自公間の溝が露呈した。その後、現行額を引き下げ、対象拡大を容認する方向で調整に入ったものの、閣僚経験者は「改革に後ろ向きな姿勢が浮き彫りになっただけだ」と悔やむ。
 野党は「連立を組む自公の間にほころびが見え始めた」(立憲民主党幹部)と踏む。政治とカネ問題に注がれる厳しい世論を背に、後半国会で攻勢をかける構えだ。
 立民と日本維新の会、共産党、国民民主党は政策活動費の「廃止」を要求。国民を除く3党は企業・団体献金も「禁止」を掲げている。自民との立場の違いは顕著で、衆参両院の政治改革特別委員会で今後の論点となる。
 首相が急ぐ「改革」の実現。自公間の隔たりを埋め、野党の理解も得た上で成案を得られるのだろうか。官邸筋は自身に言い聞かせるように力説する。「内閣支持率が低迷し、衆院3補欠選挙で全敗した今、ひたすら丁寧に、低姿勢で臨むしかないじゃないか」