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指示権拡充で与野党攻防 地方自治法改正案審議入り


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自治体に対する国の指示権を拡充する地方自治法改正案の審議が7日、衆院本会議で始まった。新型コロナウイルス感染拡大に際し、自治体だけでは対応困難な状況や、国と自治体の意見の相違があり、行政が混乱した教訓を踏まえた。野党は、国と地方を「対等」と位置付ける地方自治の原則に反すると批判した。
 国の指示権は現状、必要最小限に抑えられており、災害対策基本法など個別の法律に規定があれば発動が可能。改正案では、災害や感染症のまん延など国民の安全に重大な影響を及ぼす事態であれば、個別法に規定がなくても国民の生命保護に必要な対策の実施を国が指示できるようにする。
 立憲民主党の大築紅葉氏は本会議で「地方分権の流れを逆回転させる」と指摘。コロナや過去の災害時の対応を挙げ「国が正しいとの前提で指示に従うよう義務付けることで、かえって住民の生命や安全を損なう」と批判した。
 共産党の宮本岳志氏は「重大な事態の範囲は極めて曖昧。コロナ対応では、学校の一斉休校要請など、国の一律の指示が現場に混乱を持ち込んだ」と廃案を求めた。松本剛明総務相は国の指示について「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態に限って適用され、地方分権が後退するとの指摘は当たらない」と説明した。
 この日、自治体の首長や市民の団体などが改正案への反対集会を国会内で開催。講演した中央学院大の福嶋浩彦教授は「想定していない事態が起きた時こそ、国と自治体が対等な立場で協議、連携しないと解決できない」と指摘した。