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実情に合う施策を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2060年には高齢者の「2・8人に1人」が認知症や軽度認知障害(MCI)になるとの推計が明らかになった。誰もが発症し得る身近な病として理解を深め、住み慣れた地域で安心して暮らしていける環境づくりを急ぐべきだ。施策を推進する政府や自治体には、本人や家族ら当事者の実情に寄り添う姿勢が求められる。
 認知症やMCIの高齢者は今後、増加傾向となる見通しだ。少子高齢化に歯止めがかからず社会保障費が膨らむ中、高齢者らの暮らしぶりを見守って発症の兆候を見逃さず、早期の受診やケアにつなげる重要性は高まる。
 本人の意思を尊重しつつ、社会とのつながりを維持するには、自治体による支援に加え、地域のNPOなど民間の協力は欠かせない。家族らの介護離職を防ぐ対策も十分とは言えない。
 医療技術は向上し、進行を抑える新薬「レカネマブ」が開発された。だが過度な期待を寄せるのは禁物だ。副作用の恐れがあるほか、高額なため公的医療保険の財政を圧迫する懸念がある。
 施策の拡充には財源が必要となる。政府は今秋にまとめる基本計画で施策を具体化し、財源を国民に示す責務がある。負担増の議論も避けてはならない。