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その場しのぎ 法改正へ難路 立民「政活費廃止・パーティーも禁止」


その場しのぎ 法改正へ難路 立民「政活費廃止・パーティーも禁止」 政治資金規正法改正を巡る各党の立場
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 裏金事件を受けた政治資金規正法改正を巡る自民、公明両党の協議は、曖昧さを残す決着となった。政治活動の自由を確保するため、政治資金の透明化をなるべく限定したい自民と、徹底した透明化を求める公明の主張がぶつかり、もつれた末の大筋合意。野党は「改革とは程遠い妥協の産物」と批判し、国会で追及する意向だ。岸田文雄首相が目指す今国会での法改正の道はなお険しい。
 
 ◆後で決める

「改正案成立に万全を期してサインした」。9日夕、国会。自民の茂木敏充幹事長は、合意文書を公明の石井啓一幹事長と取り交わすと、満足げな表情を浮かべた。
 自公実務者協議で難航したのが、政治資金パーティー券購入者の公開基準額引き下げだ。公明は、現行の20万円超では「不明朗な資金の流れが生じやすい」(山口那津男代表)として、寄付と同じ5万円超への引き下げを要求。与党合意に数字を明記するよう訴えた。
 自民は「10万円超が限界だ」と譲らない。引き下げ過ぎれば、公開を敬遠する企業・団体によるパーティー券の買い渋りが起きるとの懸念に加え、安倍派以外で「公開基準額の多寡が裏金事件の原因ではない」(ベテラン議員)との意見も根強かった。
 溝が埋まらぬまま迎えた9日の自公協議は、引き下げ方針のみ確認し、具体的な額は決めなかった。与党筋は「正式な改正案を提出するまでに決めればいい」と解説するが、弥縫(びほう)策と言わざるを得ない。

 ◆「表に出せない」

 「本当に同じ景色を見ているのだろうか」。9日朝の時点で、公明幹部が首をひねったのは政策活動費の扱いだ。政党から党幹部に支出され、使途公開が不要のため「ブラックボックス」と非難される。
 政策活動費の枠組みを持たない公明は強気だ。政党から資金を渡された政治家個人に使途明細書作成を義務付け、政党が政治資金収支報告書に添付する案を提示。幹部は「一致できなくても押し通す」と息巻いていた。
 自民は歩み寄るそぶりを見せながらも、政党が政治家に支給する段階で目的別に分けて金額を公開する案を持ち出した。詳細な使途を見えにくくしようとの思惑がにじんだ。閣僚経験者は「対野党の選挙工作といった表に出せない使い道も多い」と漏らす。
 最終的に、合意文書には「支払いを受けた者がその使途を報告し、収支報告書に記載する」と明記された。自民側は「大きな重い一歩」と胸を張るが、公明が求めた明細書作成は入らず、公開の在り方について改めて協議する構えだ。

 ◆野党切り崩し

 自公は与党案を条文化し、野党にも賛同を呼びかける。ただ自民にとって、野党案はさらにハードルが高い。
 政治資金パーティーに関し、立憲民主党は開催自体の禁止を求める。日本維新の会や共産党は、企業・団体によるパーティー券購入の禁止をうたう。政策活動費に至っては、立民や共産、国民民主党が廃止や全面開示を主張。維新は、廃止または第三者による監査が必須条件だと迫っている。
 与野党攻防を見越し、自民は早速、野党の切り崩しを狙う。9日、与党合意に先立ち、首相の最側近として知られる木原誠二幹事長代理は維新幹部と国会内で会談し、現状を報告。「対応を考えておいてほしい」と秋波を送った。