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「関係団体」定義狭く 資金移動、制度の抜け穴に 閣僚・党首ら後援会   


「関係団体」定義狭く 資金移動、制度の抜け穴に 閣僚・党首ら後援会    インタビューに応じる「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政治資金の使途公開基準が厳格な国会議員関係政治団体と資金的、人的つながりがあるのに、関係団体に該当しない閣僚や党首の後援会が多数に上ることが明らかになった。自民党の茂木敏充幹事長側による多額資金移動と同じ構図で、基準が緩い「その他の政治団体」に資金が移され、使途内容がほとんど分からなくなるケースも。専門家は関係団体の定義が狭いことを問題視し、国民の監視の目が届くよう抜本的な制度改正を訴える。 (1面に関連)

明細ゼロ

 自民党の政治資金規正法改正案によると、関係団体から年1千万円以上の寄付を受けた場合、その他団体にも厳格な公開基準が適用される。
 2020~22年に関係団体からその他団体への資金移動があった閣僚らのうち、新藤義孝経済再生担当相が年2581万~1255万円といずれの年も1千万円を上回ったが、他の5議員は年800万~30万円。
 公開基準が緩いその他団体への資金移動は違法ではないが、政治資金の使い道が不透明になるため、制度の抜け穴として批判が強い。NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「1千万円以上という基準を設けても、移動額を抑えたり移動先を分散・迂回(うかい)させたりして、いたちごっこになるだけだ」と指摘する。
 高市早苗経済安全保障担当相の場合、関係団体から高市早苗連合後援会に3年間で計150万円の寄付があった。同後援会の政治資金収支報告書で使途明細が書かれた支出は1件もなかった。
 高市氏の事務所は取材に「後援会は適法、適正に会計処理をしており、今後も法に基づき適切な政治活動を継続していく」と回答。「与野党問わず国会議員の後援会であっても、定義に当てはまらず関係団体になっていないものは多数あるようです」とコメントした。

不十分な制度

 規正法上、関係団体は国会議員が代表になっている政治団体の他に「寄付金控除制度の適用を受けている政治団体のうち、特定の議員を推薦、支持する団体」と定義され、同制度の適用が関係団体の要件となっている。
 松本剛明総務相や、教育無償化を実現する会の前原誠司代表の名前を冠した「税理士による松本たけあき後援会」「税理士による前原誠司後援会」は適用を受けず、その他団体になっているが、「税理士による上川陽子後援会」は上川外相の関係団体だ。
 適用の有無で団体の位置付けが分かれる現行制度は、厳格な使途公開基準が及ばないようにしたいとの思惑が通ってしまう欠陥を抱える。
 その他団体である国会議員の後援会が、政治資金パーティーを開き資金を集めるケースもある。情報公開クリアリングハウスなどは「極めて不完全で不十分な制度になっている」として関係団体の狭い定義を見直し、対象範囲の拡大を求める意見書を1月に公表した。

ひも付け

 総務相に届け出がある約3千の政治団体のうち、現職国会議員の関係団体は23年3月末時点で553。都道府県選挙管理委員会分も含め総務省が約2千団体を議員ごとにまとめて公表している。
 その他団体の名称なども公表されているが、議員との関連性は分かりにくいのが実情。三木氏は「議員と政治団体のひも付けができておらず、国民が監視できないことが根本的な問題だ。資金移動額を基準にした対策は小手先に過ぎず、関係団体の範囲を広げることが必要だ」と指摘した。

<用語> 国会議員関係政治団体 政治資金規正法は(1)国会議員が代表を務める団体や政党支部(2)寄付金控除制度の適用を受け、特定の国会議員を推薦・支持する団体―を「国会議員関係政治団体」と定める。人件費を除く1万円超の支出について具体的な使途内容の記載が必要で、全ての領収書の保管義務がある。税理士など「登録政治資金監査人」による監査も受けなければならない。政治資金の透明性を高めるための特例として2007年の法改正で盛り込まれ、09年分から運用が始まった。関係団体に該当しない「その他の政治団体」は政治活動費のみ5万円以上の支出明細を記載する必要がある。