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野党は搾取継続懸念 悪質業者の介在「防げず」


野党は搾取継続懸念 悪質業者の介在「防げず」 育成就労制度の外国人材受け入れイメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 新たな外国人労働者の受け入れ制度「育成就労」の関連法案が21日、衆院を通過した。衆院法務委員会の審議で立憲民主党など野党は、チェック機能が甘い仕組みは技能実習と変わらず、悪質なブローカーの介在を防げないとして「搾取」が継続すると批判する。受け入れ先の監督機関の強化策も不十分だと強調。政府は予算の制約などから新制度への理解を求めるが、適正化に疑問符がちらつく。

 高額手数料

 「外国人は搾取され続け、抜本的な解決には程遠いのではないか」。立民衆院議員の鈴木庸介氏は、新制度でも受け入れの仕組みが大きく変わらない点を追及した。
 技能実習は、日本側に実習生を紹介し、日本語教育などにも取り組む海外の送り出し機関と、企業の依頼で実習生を募る国内の監理団体が受け入れを仲介。実習生と送り出し機関の間にブローカーが介在し、実習生から高額な手数料を徴収したケースが問題化した。
 監理団体は実習先を指導・監督する役割も担うが、十分果たせていないとの見方も根強い。実習先が支払う監理費で運営されるため、実習先の事情を優先し取り締まりが不十分な事例もあった。

 対案提出も

 立民は技能実習と同様に、民間による受け入れを継続する政府案を不十分とし、衆院に対案を提出した。送り出し国の政府機関や、日本のハローワークが新制度に関与する仕組みを提唱する。
 韓国が導入する政府間での外国人労働者受け入れ制度「雇用許可制」を参考に、公的なチェックにより、ブローカーの介入を防いで過剰な費用の発生を抑え、実習生が多額の借金を抱えて来日する構造的な問題を解消できると訴えた。
 一方、参考人質疑で国立社会保障・人口問題研究所国際関係部の是川夕部長は、韓国の制度について「公的部門が職業あっせんを担うため、採用までの待ち時間が長い。希望者の半数程度が採用に至らない」と説明。仲介機能をなくし、公的機関が担うデメリットに言及した。
 小泉龍司法相は、技能実習の監理団体から名称変更される「監理支援機関」について、業務が多岐にわたり、公的機関が担うには膨大な人員や予算を要すると主張。「大きな負荷がかかる。民間の機関に担当してもらうのが合理的だ」と述べ、理解を求めた。対案はその後、否決された。

 第三者性

 監理支援機関の監督機能強化策にも疑問の声が上がる。現在は任意とされる弁護士や行政書士といった外部監査人の設置を義務化するが、選定は監理支援機関に委ねられる。立民の衆院議員寺田学氏は第三者性が乏しいとして効果を疑問視。「甘い監査が起こり得る」と強調し、実効的な監督体制の構築を促した。
 在留ベトナム人の支援に取り組むNPO法人「日越ともいき支援会」の吉水慈豊代表理事は「監査人の設置程度では悪質な事業者を排除できるとは考えにくい」とみる。改正案の内容では、事業者と監理支援機関の密接な関係が是正されず、事業者側の都合で外国人労働者を安易に解雇するケースはなくならないと指摘。「意に反して仕事を辞めさせた事業者は受け入れ停止とするなど、厳正なルールを設けるべきだ」と求めた。