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極刑主張に姉、動じず 弁護団「検察、汚点残した」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「死刑を求刑します」。被告不在の法廷に、検事の声が響いた。1966年の事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の22日の再審公判で、検察側は半世紀以上前に開かれた確定前の一審と同様、極刑が相当と主張。長期収容による拘禁反応が残る袴田さんに代わって出廷した姉ひで子さん(91)は、動じた様子を見せず、静かに検事を見つめていた。
 静岡地裁では26席の傍聴券を求め、支援者ら224人が列を作り、法廷の傍聴席は満席に。裁判官の後ろには、長い審理で積み上がった裁判資料の分厚いファイルが何冊も並んだ。
 「強固な殺意」「極めて冷酷で残忍」。論告を担当した男性検事は早口で非難の言葉を重ねた。2時間ほどの読み上げの最後、声色を変えず「死刑を」と求めた。傍聴席から「おかしいでしょ」と女性の鋭い声が上がった。
 弁護団は最終弁論で、捜査段階の証拠捏造(ねつぞう)の可能性を改めて訴え、検察について「何人かは切腹しなければならない」と言及。検事が「侮辱だ」と色をなして抗議する場面もあった。
 閉廷後、記者会見した弁護団の角替清美弁護士は、有罪立証を最後まで維持し、死刑を求刑した検察に対して「汚点を残した」と強い憤りをあらわにした。