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袴田さん再審 9月判決 無罪公算、検察は死刑求刑


袴田さん再審 9月判決 無罪公算、検察は死刑求刑 袴田さん再審での双方の主張
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 1966年に静岡県清水市(現静岡市)のみそ製造会社専務一家4人が殺害された事件で、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん(88)の裁判をやり直す再審公判が22日、静岡地裁(国井恒志裁判長)であり、検察側は確定審と同様に死刑を求刑、弁護側は改めて無罪を主張し結審した。判決は9月26日。
 袴田さんに代わって出廷した姉ひで子さん(91)は最終意見陳述で「余命いくばくもない人生かと思いますが、巌を人間らしく過ごさせてくださいますようお願い申し上げます」と訴えた。刑事訴訟法は再審開始について「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」があったときと定めており、袴田さんは無罪となる公算が大きい。
 検察側は論告で、袴田さんが金品を得るため犯行に及んだと指摘。「訴訟能力の観点から心神喪失状態と認定されているが、量刑事情を変更するものではない。罪責は誠に重大だ」と述べた。証拠捏造(ねつぞう)の指摘に対しては「実行不可能で非現実的な空論だ」と反論した。
 一方、弁護側は最終弁論で、みそタンクから血痕の「赤み」が残った状態で見つかり、確定判決で犯行着衣とされた「5点の衣類」について、発見直前に捜査機関が隠した捏造証拠だと強調。無罪を主張した上で、再審判決で捏造を認定するよう求めた。確定判決は誤りとし「国家による重大な犯罪行為だ」と非難した。
 再審公判は昨年10月に始まり、この日は15回目。検察側は、被害者遺族の「尊い4人の命が奪われていることを忘れないで」とする意見陳述書も読み上げた。静岡地検の小長光健史次席検事は求刑について「極めて悪質な事案であることなどを踏まえた」と説明。主任弁護人の小川秀世氏は記者会見で「腹立たしく許されない」と批判した。戦後、死刑事件の再審公判は袴田さんで5例目。80年代に開かれた過去4事件の再審では、検察側は有罪主張を維持し死刑を求刑したが、いずれも無罪が言い渡された。