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対中ロで危機感共有 為替は日本の“一人旅” G7財務相会議


対中ロで危機感共有 為替は日本の“一人旅” G7財務相会議 イタリア・ストレーザで集合写真に収まるG7の財務相ら=24日(ロイター=共同)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 イタリア北部ストレーザで開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、中国の電気自動車(EV)などの過剰生産やウクライナ侵攻を続けるロシアに対する問題で危機感を共有し、G7が対中ロで結束した。一方、為替問題については関心が低く、円安に悩む日本は今後も“一人旅”を続けることになりそうだ。 (1面に関連)

 制裁関税

 「G7は産業を守るため、一致した態度を示さなければならない」。24日の討議前に取材対応したフランスのルメール経済・財務相。中国の過剰生産問題を議題の筆頭に挙げ、危機感を示した。
 中国政府の補助金で安価なEVや太陽光発電の関連機器などが世界市場にあふれ、公正な競争が阻まれているとして、バイデン米政権は制裁関税の強化を表明。ドイツなど自動車産業に支えられる欧州連合(EU)も制裁関税を課す可能性がある。米ブルームバーグ通信によると、カナダも中国製EVの関税引き上げを検討している。
 ロシアに関しては各国の制裁で凍結した資産をウクライナ支援に活用する仕組み作りが議題となった。ウクライナ軍は苦戦しており、G7の側面支援は喫緊の課題だ。

 反発

 中ロはG7に強く反発している。中国は過剰生産批判に「全く根拠がない」(王文濤商務相)と反論。日本や米国、EUなどから輸入し、自動車部品などに使われるポリアセタール樹脂の一部が不当に安い価格で販売されている疑いがあるとしてダンピング(不当廉売)に関する調査を始め、報復の動きを見せている。
 ロシアのプーチン大統領もG7会議中の23日、けん制するかのように対抗措置に踏み切った。ウクライナ侵攻後に米国で凍結されたロシア資産が接収された場合、ロシア国内にある米国の資産を損害賠償に活用することを可能にする大統領令に署名。G7にはロシアの報復を懸念する声もあり、ロシアが措置を拡大すれば足並みの乱れにつながる懸念がある。

 けん制材料

 為替問題は主要議題とならなかった。日本政府は歴史的な円安に歯止めがかからないことに危機感を強めており、G7が踏み込んだメッセージを出せば円安進行の大きなけん制材料になるが「為替問題への注目は日本ぐらい」(金融筋)だった。
 日本は各国の雰囲気を察知し、G7が2017年に合意した「為替相場の過度な変動が経済や金融に悪影響を与える」との考えを再確認できれば十分と判断。声明には「17年5月の為替相場についてのコミットメントを再確認する」との文言がかろうじて入った。
 G7会議に合わせた日米財務相会談の開催も見送られた。市場では日本政府による円買い介入への警戒感は強く、会談すれば介入を米国が容認するかどうかに関心が集まる。イエレン米財務長官は「為替介入はまれであるべきだ」と繰り返しており、会談後に改めて慎重姿勢を示せば円安進行を招く懸念もあった。
 11月の米大統領選を前に、バイデン大統領と再対決する見込みのトランプ前大統領は、自国の輸出に不利な円安ドル高を「米国にとって大惨事だ」と発言。為替問題は日本にとって「トランプ頼み」になる可能性もある。(ストレーザ、東京共同=建部佑介、藤原章博)
イタリア・ストレーザで集合写真に収まるG7の財務相ら=24日(ロイター=共同)