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孤立深まるイスラエル 方針転換可能性は低く


孤立深まるイスラエル 方針転換可能性は低く ガザ情勢巡りイスラエルにかかる圧力(写真はロイター)
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 国際司法裁判所(ICJ)がイスラエルにパレスチナ自治区ガザ最南部ラファへの攻撃停止を命じる仮処分を出した。「攻撃は自衛目的」とするイスラエルの主張に明確な「ノー」を突き付けた。7カ月以上続くガザ戦闘の停止に向け、国際社会では今月、イスラエルに圧力をかける動きが相次ぎ、イスラエルの孤立は一段と深まったが、攻撃をやめる気配はない。

 米は沈黙

 「イスラエルはICJの命令を無視するだろうから意味がない」。ラファからガザ中部デールバラハに退避したサフィ・ムハンマドさん(68)は24日、電話取材に吐き捨てるように言った。「イスラエルを動かせるのは米国だけだ」
 イスラエル軍は今月6日、イスラム組織ハマスの最後の拠点とみるラファで限定的地上作戦を開始した。
 ラファへの本格侵攻に反対するバイデン米政権は11月の大統領選をにらみ、ガザ戦闘への対応に苦慮し、今回の仮処分に沈黙している。ICJが2022年3月、ロシアにウクライナ侵攻停止を命じた際に「軍事作戦を直ちに停止するようロシアに求める」と表明したのと対照的だ。
 レバノンの国際政治学者ダニア・コレイラト・ハティーブ氏は「米国の二重基準が浮き彫りになった。ICJの命令は米国内で続く反イスラエルデモを勢いづかせ、バイデン政権は厳しい立場になる」と分析する。

「ユダヤ人が決定」

 ガザ戦闘を巡っては今月後半、イスラエルに攻撃停止への圧力をかける動きが相次いだ。国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任検察官は20日、戦争犯罪容疑などでイスラエルのネタニヤフ首相らの逮捕状を請求。スペイン、ノルウェー、アイルランドの欧州3カ国は22日、パレスチナを国家承認すると表明した。ガザで3万5千人以上の犠牲者を出してなお、攻撃の手を緩めないイスラエルを看過できないとの思いがにじむ。
 ただ自衛の権利を掲げてハマス壊滅を目指すイスラエルが方針を転換する可能性は低い。対パレスチナ強硬派の極右政党党首、ベングビール国家治安相はX(旧ツイッター)に初代首相ベングリオンの言葉を投稿した。「われわれの未来は異邦人が何を言うかではなく、ユダヤ人が何をするかにかかっている」
 (エルサレム共同=平野雄吾)