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裏金逆風 「自民隠し」 立民、幹部送り激戦   


裏金逆風 「自民隠し」 立民、幹部送り激戦    激戦だった主な首長選
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 与野党が激戦を展開した静岡県知事選が投開票された。自民党は裏金事件による逆風をかわすため、あえて幹部を投入せず「自民隠し」を徹底。4月の衆院3補欠選挙で全勝した立憲民主党は、次期衆院選をにらみ、幹部を送り込んで世論を引き付ける戦略を取った。過去には政権運営に影響を与えた地方選もあっただけに、内閣支持率の長期低迷にあえぐ岸田文雄首相は勝敗に気をもんだ。

弱体化

 「情勢はどうだ」。選挙戦終盤の23日、首相は自民静岡県連の幹部に電話した。党の調査では、推薦した元副知事大村慎一氏が、立民と国民民主党推薦の元浜松市長鈴木康友氏を猛追していた。首相は「引き続き頑張ってくれ」と求めた。
 自民は推薦を出したものの、世論の不信感を考慮し、幹部の派遣は「逆効果」(県連関係者)と判断し見送った。県選出で「ポスト岸田」候補に名前の挙がる上川陽子外相は貴重な戦力だったが、応援演説で「うまずして何が女性か」と発言し、野党から批判された。
 裏金事件の震源地・安倍派の座長だった塩谷立氏が離党し、宮沢博行氏は議員辞職するなど県連所属議員の不祥事が重なり、地元組織が弱体化した自民。一方、鈴木氏を推す立民は、泉健太代表や野田佳彦元首相らが相次ぎ応援に入った。小沢一郎衆院議員は「鈴木氏が勝てば自民はショック状態になる」と攻勢を強めていた。

不安要素

 自民には、公明党が自主投票としたことも不安要素となった。支持母体・創価学会の票を当て込めるのかどうか不透明だったためだ。選対筋は「勝ち馬を見極めようとしたのだろう」と歯がみした。
 公明の山口那津男代表は裏金事件を受け「同じ穴のむじなと見られたくない」と述べ、自民に距離を置いた。政治資金規正法改正を巡っても、自民と共同での法案提出には乗らなかった。
 最終盤、学会票の一部が鈴木氏側に流れているとの情報が自民に寄せられた。執行部の一人は「公明の協力を取り付けるためにも頭を下げる必要がある」と焦りを強めた。

苦い記憶

 知事選の行方を注視する首相には、過去の苦い記憶がある。
 麻生太郎政権だった2009年7月、静岡県知事選で自公推薦候補が敗北。8月の衆院選で自民が大敗し、政権交代につながった。菅義偉前首相は21年8月の横浜市長選で自身が支援する候補が敗れ、求心力が急速に低下し、翌月の党総裁選不出馬に追い込まれた。
 麻生、菅両氏とも当時、支持率は低空飛行で、岸田首相が置かれている現況と重なる。首相が9月の総裁再選を目指す上で、黒星の追加が不利に働くのは間違いない。首相に近いベテランは「静岡で勝利すれば、何とか土俵際で踏みとどまれるはずだ」と語った。