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パンデミック条約 協議 WHO 技術移転、交渉難航も


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 【ジュネーブ共同】世界保健機関(WHO)総会が27日、スイス西部ジュネーブで始まった。6月1日までの日程で、感染症の世界的大流行(パンデミック)の予防や対応を定めた「パンデミック条約」について協議する。今回の総会での妥結を目標としているが、ワクチン開発の技術移転などを巡って交渉は難航している。継続協議となる事態も見込まれる。
 テドロス事務局長は総会で、条約について「総会前に合意形成できることを望んでいたが、加盟国には依然(合意への)意志があると確信している。意志があるところに道はある」と述べた。
 パンデミック条約は新型コロナウイルス禍を教訓とした新たなルールで、加盟国間の交渉は2022年2月に始まった。
 草案によると、各国の感染症予防や監視能力の向上にWHOが協力すると明記。病原体の情報の迅速な共有や医薬品の確保、科学的証拠に基づく正確な情報の発信の規定も盛り込まれている。
 主に先進国と途上国の間で溝があるのは技術移転のほか、製造したワクチンや検査薬の10%を無償で、10%を廉価でWHOに提供するとした点。日本を含む先進国側は「技術革新を損ねる誘因だ」として反対し、条約の内容について合意に至っていない。
 新型コロナ禍では、公衆衛生の管理能力が高い先進国でも死者や感染者が多数に上った。ワクチン生産国などが自国民への接種を優先してワクチンを備蓄するのも問題視され、ワクチンを確保できない途上国は公平な分配を訴えていた。
 総会では他に、緊急事態宣言手続きなどを定めた「国際保健規則」の改定も協議。加盟国は「パンデミック」の文言を初めて盛り込むことや、発生を認定する条件などについて話し合っている。