有料

改めて問われる説明責任還流再開 下村氏要求か裏金復活、腹心促す


改めて問われる説明責任還流再開 下村氏要求か裏金復活、腹心促す 自民党安倍派裏金事件に関する衆院政治倫理審査会での下村博文氏の発言
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 安倍晋三元首相が指示した資金還流中止はなぜほごにされたのか―。自民党安倍派裏金事件の謎が一つ解けつつある。腹心の一人として安倍政権を支えた下村博文元政調会長が事務方に再開を促していたとみられることが1日分かった。衆院政治倫理審査会では還流復活への関与を強く否定しており、政治資金収支報告書の虚偽記入への認識を含め、改めて説明責任を問われるのは必至だ。
 (27面に関連)

 初めて知った

 裏金づくりの起点と並び、還流再開の経緯やきっかけは事件の大きな謎とされてきた。
 下村氏が出席した政倫審は安倍派幹部では最後となる3月18日に開催された。西村康稔氏らが再開の経緯を明らかにしなかったため、かつて派閥の会長を務め、西村氏らを評価する森喜朗元首相との確執を抱える下村氏の発言に注目が集まった。だが他の幹部同様「知らぬ存ぜぬ」を貫き、肩透かしの結果となった。
 下村氏によると、2022年4月の幹部会議に西村氏、いずれも離党した塩谷立氏、世耕弘成氏、会計責任者兼事務局長の松本淳一郎被告(76)=政治資金規正法違反罪で公判中=と共に出席し、当時会長だった安倍氏から、資金還流を中止するよう指示された。収支報告書への記載の有無は話題に上らなかったという。下村氏は、派閥パーティー券の販売ノルマ超過分が議員側に還流されているとこのとき初めて知ったと語った。

 弟分

 還流中止の指示から約3カ月後、安倍氏は銃撃され急逝した。下村氏は、22年8月の幹部会議は葬儀への対応や派閥運営に関する話題が中心だったと説明。所属議員から還流復活を望む声が高まり、還流の代わりに議員個人のパーティー券を派閥が購入する代替案が議論されたが、結論は出なかったとした。
 下村氏が還流再開を強く提案したのは、同じ文教族の弟分だった衆院議員池田佳隆被告=自民除名、政治資金規正法違反罪で起訴=が、還流中止に激しく反発したためだった。
 池田被告は会頭を務めた日本青年会議所人脈を生かし、派閥のパーティー券を大量販売。選挙が強いとはいえない被告にとって、選挙資金を得られなくなる還流中止は死活問題だった。

 証人喚問

 一方、事務局トップの松本被告は元NTT社員で、議員秘書の経験がない異色の事務局長として知られた。会長不在の中、事務方が独断で還流再開を決められたのか―。東京地検特捜部による捜査もこの点が焦点の一つだった。虚偽記入への幹部議員の関与があったかどうかを重点的に調べたとされるが、共謀を示す証拠は見つからず、幹部らの立件は見送られた。
 政倫審でも野党議員らは、松本被告が独断で還流再開を決められるのかどうか繰り返し質問した。下村氏は「長年の慣行の中で事務局長が判断されたのか、少なくとも私自身は相談を受けていない」と答弁し「事務局長1人で判断したかのような説明は本当に無責任だ」(共産党の宮本徹氏)と出席議員らをあきれさせた。