裏金事件を受けた政治資金規正法改正を巡り、修正合意したはずの自民党と日本維新の会が一転、衆院政治改革特別委員会でさや当てを演じた。採決のため合意を急ぎ、修正法案の細部の詰めを後回しにしたことが足を引っ張った。改革が骨抜きにされるのではないかと警戒し、再び要求を強める維新。自民は「今更なぜ言うのか」と懸念を募らせた。
ほころび
「合意した通り条文化してもらうのが当然だ」。維新の青柳仁士氏は3日の特別委で、自民案提出者の鈴木馨祐氏に迫った。自民と維新は5月31日の党首会談で、政策活動費の使途公開など3項目で合意したばかりだ。
しかし、その後になって自民側から政策活動費の使途公開対象は1件当たりの支出が50万円を超える場合に限定するとの連絡が入った。金額にかかわらず公開対象となるつもりでいた維新幹部は「ちゃぶ台返しだ」と怒りをぶちまけた。
鈴木氏は特別委で「自民の運用では、一番少ない場合でも150万円以上だから50万円以下は想定されない」と説明。納得できない青柳氏は全支出を対象とするよう求め、応じない場合は「賛成しない」とけん制した。
自民側からすれば、修正前の法案で既に政策活動費の定義について「50万円超の支出」としていた。関係者は「この期に及んでごねるのか」といら立ちを隠さない。ただ維新の離反を招けば大幅譲歩して整えた採決環境にほころびが生じる。3日夕、自民幹部は「のむしかないだろう」とこぼした。
特別委では、自民と維新の合意内容が生煮えであることも露呈した。
立憲民主党の山岸一生氏は、政策活動費の扱いを巡り、自民の修正法案では年間の支出上限額が明示されていない点を問題視。「目安は持っているのか」と食い下がったが、鈴木氏は「今後各党と協議していく」との答弁を連発した。
さらに領収書の公開を政治資金収支報告書公表から「10年後」とした理由を問われても、鈴木氏は「どの程度の公開をどの時期にできるのか、真摯(しんし)な協議が必要だ」と回答をはぐらかした。
維新は元々、政策活動費の支出上限を「政党交付金の1%か5千万円のいずれか少ない額を超えない範囲」と提起していた。馬場伸幸代表は岸田文雄首相との修正合意に当たり「わが党の考え方が100%通った」と豪語したが、説得力に欠ける。山岸氏は、維新の変わり身の早さを踏まえ「自民党さん、公明党さんが同じ穴のむじなと批判されて、今度は同じ穴に維新まで入った。むじな3兄弟だ」と皮肉った。