有料

「隠蔽」主張で対立 不祥事連発、広がる批判


「隠蔽」主張で対立 不祥事連発、広がる批判 勾留理由開示手続きで前鹿児島県警生活安全部長の本田尚志容疑者が読み上げた意見陳述
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 国家公務員法(守秘義務)違反容疑で前鹿児島県警生活安全部長本田尚志容疑者(60)が逮捕された事件で、トップの野川明輝本部長による「不祥事隠蔽(いんぺい)」を訴える本田容疑者と、否定する野川本部長の主張が真っ向から対立している。真相は不明だが、県警内部で不祥事が相次いだ果ての最高幹部経験者の逮捕という事態に、県民からは批判の声が上がっている。

説明不足

 「隠蔽を意図して指示したことは一切ない」。野川本部長は7日夕、県警本部で取材に応じ、断言した。前日の取材対応では曖昧な説明に終始し、5分弱で打ち切っていた。否定も肯定もしなかったとの受け止めが広がり、火消しに追われた格好だった。
 本田容疑者の逮捕は5月31日。逮捕時の県警の記者会見に野川本部長は出席せず、幹部による説明は具体性を欠き、認否や動機も明かされなかった。事態が一転したのは6月5日、鹿児島簡裁での勾留理由開示手続きだった。
 意見陳述した本田容疑者は「県警職員の犯罪行為を本部長が隠蔽しようとし、どうしても許せなかった」と口火を切り、3月下旬の退職後、記事化を期待して記者に不祥事をまとめた文書を送ったと主張。「自分の利益のために行ったことではない」と結んだ。

疑問

 県警では刑事事件による警察官の逮捕や書類送検が相次いでいる。虚偽の捜査資料作成、強制性交、別の情報漏えい、不同意わいせつ―。本田容疑者が隠蔽を指摘するのは昨年12月に起きた枕崎署員による盗撮事件だ。本田容疑者は、署員の関与を知った野川本部長が「最後のチャンスをやろう」「泳がせよう」と言い、捜査書類に本部長指揮の印鑑を押さなかったと主張。同年春から不祥事が続き、隠したがったとの見方を示した。
 一方で、本田容疑者が送ったとされる文書には自分の名前はなく、前県警刑事部長の名前や電話番号などが問い合わせ先として記されていた。野川本部長が隠蔽に関わったと読み取れる内容はなかったが、前刑事部長が「静観」を指示したとの趣旨の記載があった。
 枕崎署員の逮捕は5月。県警は8日、3月に退職した前刑事部長が在任中、盗撮事件を知らず、「静観」の指示を否定していると明らかにした。ある県警職員は「公益通報と主張するなら、なぜ他人の名前を書くのか」。別の職員は「漏えいの理由とする本部長の隠蔽について触れていないのは疑問だ」といぶかった。県警首脳部のドタバタ劇に、県民はあきれている。本田容疑者逮捕に、県警には250件を超える電話があり「多くは厳しいご意見」(担当者)だった。県警幹部は「これ以上悪い方向に進まないようにしなければならない」と強調。別の幹部は「県民の信頼回復に全力を注ぐ」と誓った。