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賃上げ「政策総動員」 社会保障持続へ1%超成長


賃上げ「政策総動員」 社会保障持続へ1%超成長 「骨太の方針」
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府が11日公表した、「骨太方針」案では、人口減少が深刻化する中でも社会保障を持続させるため、実質国内総生産(GDP)の成長率が1%を安定して上回る経済をあるべき姿として提示。物価を上回る賃上げによるデフレ完全脱却に向け「あらゆる政策を総動員する」と強調した。
 財政健全化を巡っては、歳出歳入から借金(国債)に関わる部分を除いた基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2025年度に黒字化する現行目標を堅持する一方、26年度以降は取り組みを後戻りさせない姿勢を示すにとどまった。21日の閣議決定を目指す。
 会議に出席した岸田文雄首相は「今こそ新たな経済ステージに向けて歩みを進める時だ」と述べた。
 1%超の経済成長は人口減少が加速する30年代以降でも財政や社会保障を持続させるために必要な条件として掲げた。実現に向けて成長分野に人材や資金を集中させて企業の生産性を向上させ、高齢者や女性の就労環境を改善させるとした。
 一方、足元では物価上昇に賃金が追い付かない状況が続く。働き手の7割が勤める中小企業の賃上げが焦点で、下請法の運用厳格化や改正で人件費を取引価格に転嫁しやすくする。
 最低賃金の全国平均時給を30年代半ばまでに1500円に引き上げる目標を「より早く達成することを目指す」と強調。来年の通常国会に教員給与特別措置法(給特法)改正案を提出し「教師の処遇を抜本的に見直す」とも書き込んだ。
 政府が14年から本格化させた地方創生は「新展開を図る」とし、女性や若者が住みやすい魅力的な地域づくりを後押しする。タクシー会社の管理下で一般ドライバーが旅客運送する「日本版ライドシェア」は「安全を前提に、全国で広く利用可能とする」と記した。タクシー会社以外の参入は今後も議論する。年金制度改正を巡っては、厚生年金に加入するパートら短時間労働者を増やすことを念頭に「年末までに道筋を付ける」とした。
 安全保障関連では、サイバー攻撃を未然に防ぐため、相手側のサーバーに侵入し無害化を図る「能動的サイバー防御」の実施に向けた法案を早期に提出する。防衛力強化のための増税の開始時期は明記せず、年末の税制改正議論に委ねた。