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取り調べは「不穏当」 大阪国賠訴訟 元特捜検事認める


取り調べは「不穏当」 大阪国賠訴訟 元特捜検事認める 記者会見するプレサンスコーポレーションの山岸忍元社長(手前)=11日午後、大阪市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 大阪地検特捜部が捜査した業務上横領事件で違法な取り調べがあったとして、無罪が確定した不動産会社プレサンスコーポレーション(大阪市)の山岸忍元社長(61)が国に7億7千万円の賠償を求めた訴訟の証人尋問が11日、大阪地裁で開かれた。山岸氏の元部下=業務上横領罪で有罪確定=を取り調べた大阪地検特捜部元検事の田渕大輔・東京高検検事(52)は当時の取り調べを「不穏当だった」と認めた一方、山岸氏の有罪証拠は十分で無罪判決は「残念」と述べた。
 検察独自捜査の担当検事が尋問されるのは異例で、捜査の一端が明らかになった。
 田渕氏は尋問で、当時の取り調べで「検察なめんなよ」と発言したことに関し「不穏当な言い回しだった」と認めた。一方で、検事として有罪判決を取れなかったことを念頭に「残念な判決だった」と述べた。
 法廷では、元部下に「あなたはプレサンスの評判をおとしめた大罪人だ」などと詰問する取り調べ録画が再生された。田渕氏は、元部下について「取り調べに真摯(しんし)に向き合っていないと感じた」と述べ、正面から向き合ってもらうため大声で罵倒したり、机をたたいたりしたと説明した。
 山岸氏は閉廷後の記者会見で「見立てに合った供述を取る組織。冤罪(えんざい)は当然のように起きる」と検察を批判した。
 尋問には山岸氏の取り調べを担当した元特捜検事の山口智子・大阪地検刑事部副部長(55)も出廷。「山岸さんに対して誠実に話した」などと取り調べに問題がなかったとの認識を示した。
 国賠訴訟では、現場の別の検事が山岸氏の逮捕を待つよう進言したことが地裁に提出した陳述書で判明している。
 事件で山岸氏は、学校法人の土地を巡る売却資金を同法人の元理事長らと共謀して横領したとして、2019年に特捜部に逮捕、起訴された。山岸氏は資金について「元理事長個人ではなく学校法人に貸し付けた」として共謀を否認した。大阪地裁は共謀があったとする関係者の供述の信用性を否定。21年に山岸氏に無罪を言い渡し、確定した。