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ALS新薬 実用へ前進 iPS細胞使い病態再現


ALS新薬 実用へ前進 iPS細胞使い病態再現 iPS細胞を使った創薬のイメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 体が徐々に動かせなくなる難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の新たな治療法の開発を目指す臨床試験(治験)について、京都大の井上治久教授らの研究チームは12日、第2段階の治験において、一部の患者で病状の進行抑制を確認したと発表した。最終段階の治験実施を目指す方針を表明、根本的な治療法がないALSの新薬実用化に向け一歩前進となった。
 治験では事前に設定した二つの主要評価項目を達成。この結果から有効性が示されたとしている。チームは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って既存薬の中から有望な薬を見つける「iPS創薬」という手法を採用。慢性骨髄性白血病の薬「ボスチニブ」を使用した。
 発症後2年以内など条件を満たした患者26人を対象に、ボスチニブを24週間投与。運動機能の度合いを示す指標を用い、ALSの既存薬が承認された際のデータと比較した。その結果、今回の治験グループでは低下の抑制を確認。別の分析では、少なくとも13人で病状の進行抑制が認められた。
 チームは患者の皮膚からつくったiPS細胞をもとにALSの病態を再現。千以上の薬を振りかけて、候補の薬を選んだ。

 iPS創薬 患者から提供を受けた血液や皮膚の細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)をつくり、神経などの細胞に成長させて培養皿の上で病気を再現、薬剤を投与して効果があるものがないか網羅的に調べる手法。患者の負担も小さく、一度にさまざまな化合物を試すことが可能になる。また既存の薬を使った場合は、安全性の確認や実用化に向けた手続きを簡略化できる利点がある。