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自民改憲案 今国会断念 岸田氏 「総裁選前」目標届かず


自民改憲案 今国会断念 岸田氏 「総裁選前」目標届かず 憲法改正手続きの流れ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自民党は23日に会期末を迎える今国会中の憲法改正原案の提出を見送る方針を固めた。立憲民主党が反対し、強行すれば政治資金規正法改正などの国会審議に影響しかねないと判断した。複数の関係者が12日、明らかにした。首相は9月の自民総裁選での再選をにらみ改憲に関心が高い保守層を意識し、任期中の実現を掲げていた。原案提出の見送りで国会発議の見通しは立たなくなり、目標達成は断念せざるを得ない状況となった。
 保守層を強固な支持基盤とした安倍晋三元首相も改憲を掲げ続けたものの、実現できなかった。岸田首相は今年1月の施政方針演説で「任期中に実現したいとの思いに変わりはない」と強調。今月10日の国会答弁では「時間的な制約があることは事実だが、一歩でも議論を前に進めるべく党として最大限努力する」と述べていた。
 自民は衆院憲法審査会で、改憲勢力の5党派が一致する「緊急事態時の国会議員の任期延長」を中心に条文案の起草作業入りを提案。立民は慎重審議を求めて平行線が続く中、与党筆頭幹事の中谷元氏(自民)は改憲勢力だけで条文化に着手する方針にも言及した。
 ただ自民国対は会期末が迫る中、改憲よりも法案審議を優先。参院側では自民、公明党を含め議論の充実を求める意見が根強い。さらに立民は条文化作業が強行された場合、参院側では全ての法案審議に応じられないと自民に伝えていた。
 国民投票は国会の発議から60~180日以内に行うと定める。首相が掲げる9月までの改憲を実現するには今国会中に原案を固め、発議まで進む必要があった。自民は閉会中審査を開いて議論の前進を模索するが、立民が応じる見通しはない。