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日本の「構造的変化」重要 政治・経済の女性活躍遠く   


日本の「構造的変化」重要 政治・経済の女性活躍遠く    G7各国のジェンダー・ギャップ指数の推移
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 世界経済フォーラム(WEF)が12日に発表した男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告で、日本は先進7カ国(G7)の中で最低の118位だった。特に政治、経済分野の遅れが顕著だ。女性衆院議員の割合は約10%で、企業の女性役員比率も低い。
 各国が格差解消の取り組みを進める中、日本政府も女性活躍推進を掲げるが、その歩みは鈍く、ジェンダー平等の実現はほど遠い。

風土
 政治分野の女性参画は113位と低水準が続く。衆院議員の定数に占める女性の割合は1946年の8%から11%の微増。G7のほとんどは30%を超え、差は歴然だ。
 自民党は衆参両院議員計374人のうち女性は46人で12%に過ぎない。30%に引き上げる10年計画を昨年発表し、衆院小選挙区の新人女性候補に100万円を給付する制度を始めたが、参院からのくら替えを除く新人女性候補はわずか5人だ。
 執行部の一人は、女性候補を比例代表の名簿順位で優遇するなどの対策が必要だとしながら「保守的な自民では難しいだろう」と嘆く。鈴木貴子青年局長は、男性議員の長時間労働を念頭に「自らの働き方を『男性化』させないことが必要だ」と女性議員の意識改革も必要だと説く。
 野党の女性議員比率も芳しくない。立憲民主党は23%、日本維新の会は15%だ。立民は新人女性候補への貸付金制度の他、交流会を開催して先輩議員に相談しやすい環境づくりにも注力する。辻元清美代表代行は男性中心の各党地方組織の問題点を挙げる。「女性を候補に選ぼうという話にならない。風土を変える必要がある」と強調した。

リスク軽減
 経済分野の順位も企業役員や管理職の比率が低く、23年が123位、24年は120位と沈む。国内外の機関投資家は、経営陣の多様性を注視し、企業は対応を迫られている。
 三井住友DSアセットマネジメントは今年から投資に関する基準を厳格化。東京証券取引所の「プライム市場」上場企業に対し、取締役に占める女性比率が10%未満の場合、代表取締役の再任に反対する方針だ。取締役会など意思決定機関で、ジェンダーなど属性の不足により、偏った結論に陥ってしまうリスクの軽減が期待されている。
 昨今は大企業を中心に1人は女性取締役がいるのが一般的だが、社外からの登用も多く、社内での育成も課題だ。

構造的な変化
 ジェンダーと政治の問題に詳しい上智大の三浦まり教授(政治学)は、日本は他国に比べ、ジェンダー平等への取り組みへのスタートも、その歩みも「遅い」と話す。男性中心の政治や組織から脱却する「構造的な変化」が重要だが、十分な対策が取られず、効果が表れていないとみる。
 世界で日本だけが義務付ける夫婦同姓に経済界も強く異を唱えるが、選択的夫婦別姓の導入は実現しておらず、ハラスメントを明確に禁止する法も制定されていない。「格差を解消し、ジェンダー平等を下支えする法的枠組みが弱い。機動力を発揮すべき政治が障壁になっている」と指摘。有権者が「政治を諦めてしまう」と危惧する。
 三浦教授は、男女格差指数が公表され「近年ようやく、日本が『男女格差後進国』だと認識され始めた」とするが、「ランキングに一喜一憂せず、多角的に見るべきだ」と語る。女性の議員、管理職の割合を徐々に増やすなど「持続的な取り組みが必要」と訴えた。