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人権侵害、改善見通せず


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 外国人材受け入れ新制度「育成就労」が創設される。「国際貢献」を表向き掲げた技能実習を廃し、人材確保を目的に長期就労を促す点は前進と言える。ただ、人権侵害の温床とされた実習制度の枠組みが維持され、改善が進むかは未知数だ。理念に背き、安価な労働力の確保策として制度を乱用した歴史を踏まえ、今後の運用を注視しなければならない。
 技能実習は、人手不足に悩む地方の1次産業や製造業などから、低賃金で働き手を確保する手段として30年余り重宝された。外国人が日本経済の重要な支え手となる一方、賃金未払いなどの労働搾取や、妊娠を理由とした退職勧奨など人権問題も発覚し、国際社会から批判を浴びた。
 2022年に職場から失踪した実習生は9千人を超える。新制度は同一業務で職場を変更する「転籍」を認めるが、本人の意向に沿って実現できているのかなど運用面のチェックが欠かせない。
 政府は外国人材の定着に期待する一方、長期間家族帯同を認めない点や日本語教育の在り方に関する議論は深まらなかった。「共生社会の実現」がかけ声倒れとならないよう、課題に向き合った不断の見直しが必要だ。