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改革で教員業務量軽減 全中縮小 除外競技団体は不満   


改革で教員業務量軽減 全中縮小 除外競技団体は不満    2027年度以降の全国中学校体育大会実施競技
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 日本中学校体育連盟(日本中体連)が全国中学校体育大会(全中)の大幅な規模縮小に踏み切った。日本中体連の区分に沿えば19競技中、水泳や体操など9競技を2027年度から取りやめると決定。運営に携わる教員の業務量が増大して改革は避けられなかった一方で、削減された競技団体からは不満も漏れる。

繁忙
 東北地方で中学バドミントン部の顧問として全中に5度参加した30代の元男性教員は、家庭生活との両立ができず退職した。授業の準備をしながら土日は練習試合、お盆も練習で、完全な休日は年末年始の6日間のみ。「一日の中の空き時間もなかった」。朝練習は7時から。深夜2時まで保護者からの電話に応じた日もあったという。
 全中では会場でのアナウンスや巡回警備に当たり「ずっと運営に追われていた。東北で夏休みも短く、戻ったら学校が始まっていた」。長時間の業務にも手当は年間5万円ほどと見合っていなかった。

苦肉の策
 日本中体連は少子化への対応や教員の負担軽減の観点から改革が必要とし、21年度にプロジェクト委員会を立ち上げて全国大会の在り方について議論してきた。22年には生徒、保護者、教員の約2万5千人を対象にアンケートを実施。調査結果を基に、活動実態のある部の設置割合を示す「部活動設置率」が原則として2割未満の競技は実施しないことを決めた。
 アンケートの中で教員からは「通常業務を行いながら全中運営に携わるのは無理」「人が足りず、ひいひい言いながら運営した」という声が上がったという。プロジェクト委員の一人は「(競技削減は)全国大会を持続可能とするための苦肉の策だった」と語る。

困惑
 現在は教頭を務める川崎市中体連の石岡文男元理事長(55)は「やっと教員の本音を認めてもらった」と受け止めた。ただ除外されたハンドボールは同市で活発に活動している学校も多く「保護者も動揺している。日程短縮や各種目で参加人数を減らすなど、一律な削減はできなかったのか」と話す。
 部活には教育的側面もあり、削減対象となった競技団体は戸惑いを見せる。日本体操協会の藤田直志会長は「残念。日本の体操はジュニア世代からしっかりと基礎を習得し、世界で華麗な演技ができる選手を育んできた。育成、強化において最も大切な大会がなくなることは大きな影響がある」とコメント。体操や水泳、ハンドボールなどは代替大会開催を検討しているという。
 文部科学省は競技団体などと丁寧な議論を重ねるよう日本中体連に求めた。連盟幹部は「“あちらを立てればこちらが立たず”で苦しいが、改革は必然の状況。慎重に進めていきたい」としている。