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【識者】「オール沖縄」への批判の証し 沖縄県議選 佐藤学氏(沖縄国際大教授)


【識者】「オール沖縄」への批判の証し 沖縄県議選 佐藤学氏(沖縄国際大教授) 佐藤 学氏
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県議会選挙で自民党・公明党を中心とする勢力が、多数を勝ち取った結果は、県政与党側「オール沖縄」勢力にとって、壊滅的な打撃となる。2014年の知事選挙における翁長雄志勝利以来続いていた「辺野古反対によりまとまった」「保守も経済界も参加した」一大勢力が、10年がたち、ついえたということである。

 今回の選挙は国政での自公政権が、裏金問題・政治と金問題で、続けざまに地方選挙や衆議院補欠選挙で敗北を重ねている中での、自公勢力の勝利である。野党系26人という絞った候補者で、過半数を制したことも、玉城県政とオール沖縄勢力への県民の批判がそれだけ強かった証しである。

 翁長前知事と玉城知事が、知事選挙で圧勝を続け、県議選でも多数を取ってきた構造が目立ってきたが、市町村次元では首長も議会も、自公保守、県政野党が優位を維持してきた。選挙運動の足となる地域組織の強さの点で、県政与党側は衰退を続けてきた。その打撃が積み重なった結果である。県政を握り力がある間に、与党勢力は既得権維持に終始してきたのではないか。

 「オール沖縄」から保守政治家が離脱し続けたのに並行して、経済人も離反していった。「オール沖縄」は細っていく支持基盤を死守したい、県政与党の選挙互助会に陥っていたのではないか。

 一方この結果で、県政野党は自らの政策・政治姿勢が支持されたと認識すべきではない。多くの県民にとって深刻な問題となっている貧困は、この10年間で悪化したのではない。自民党を中心とする保守県政が長らく続いた時代から、継続して存在してきた。

 この勝利が2年後の知事選での保守知事誕生につながるとしても、それをもって県民の多くが国の政府による沖縄への軍事基地負担にもろ手を挙げて賛成したのではない。経済と基地負担の間で揺れる県民の判断は、これからも続いていく。県政野党勢力は、謙虚に県民の声に耳を傾けていかねばならない。

 (政治学)