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地方の自主性尊重必要


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 改正地方自治法は、国と地方の関係を大きく変える恐れがある。国が「指示権」を行使できる範囲が広がり、自治体の判断が尊重されてきた自治事務にまで及ぶためだ。国は想定外の非常時に限り、行使すると説明してきた。地方の自主性を尊重する姿勢が求められる。
 地方自治法は、自治体の仕事に対する国の介入は、必要最小限でなければならないと定める。
 このため指示は、自治体が国に代わって担う法定受託事務で違法行為があった場合と、個別の法律に根拠がある場合の二つに限ってきた。今回の改正は、法定受託事務だけでなく自治事務も対象にし、さらに違法行為がなくても指示できるようにしており、従来の範囲を大きく超える。
 行使の条件である「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」は曖昧だ。政権による拡大解釈や、制限なく行使される可能性を残した。仮に行使する場合は、自治体に丁寧に理由を説明し、理解を得る作業が欠かせない。
 国は、自治体との関係を「上下・主従」ではなく「対等・協力」に改めた地方分権の原則を維持すると明言した。指示権行使をちらつかせ暗黙の上下関係を強いることは許されない。平時から地方側の意見を聴き、指示権を必要としない行政を構築することが求められる。