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見直し議論欠かせず


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認する「日本版DBS」創設法が成立した。子どもの性被害根絶に向けた大きな一歩となるが、行政の懲戒処分や、示談による不起訴事案は確認対象に含まれないなど懸念も残る。課題の解消に向け、見直しの議論は欠かせない。
 対象は、裁判所で有罪が確定した性犯罪の前科に限られる。下着窃盗は「財産への罪」、ストーカー規制法違反は「恋愛感情などから付きまとう罪」として対象外。こうした人たちはチェックされないため、子どもと接する仕事に就くことが可能となる。
 そもそも、性犯罪は顕在化しない事案が多い。法務省の2019年の調査では、過去5年間の性的事件で警察に被害届を出した人は、わずか14・3%。相談することで心ない言葉を投げつけられる「二次被害」を恐れるほか、他人に知られたくないなどの理由からだ。
 9割を占める初犯対策も課題とされる。危険の早期把握のため子どもとの面談などを雇用主側に義務化。ただ自身の被害を認識できなかったり、うまく伝えられなかったりする子は多い。
 性暴力は「魂の殺人」と呼ばれる。被害をなくすため、絶えず制度の検証が求められる。