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政権浮揚、思惑透ける 電気・ガス代支援 方針転換、ちぐはぐ感


政権浮揚、思惑透ける 電気・ガス代支援 方針転換、ちぐはぐ感 記者会見する岸田首相=21日午後、首相官邸
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府が電気・ガス料金を抑えてきた補助金を一転して復活させる方針を決めた。補助金は、燃料価格が一服したとして5月使用分を最後に終了したが、突然の方針転換に政策のちぐはぐ感は拭えない。内閣支持率が低迷する中、政権浮揚のためのアピール材料との思惑が透け、支援を終了する「出口」を見いだせない迷走が続いている。 (1面に関連)
 岸田文雄首相は21日の記者会見で、再開を表明した電気・ガス料金の補助について「暑い夏を乗り切るための緊急支援だ」と強調。物価が高止まりする中で、家計の負担軽減策を拡充する必要性を訴えた。
 補助金はロシアのウクライナ侵攻や円安に伴う物価高への一時的な措置として、2023年1月の使用分から始めた。総額で3兆7千億円超の予算を確保してきたが、火力発電などの燃料となる液化天然ガス(LNG)や石炭の輸入価格がウクライナ危機前と同水準に落ち着いたことを理由に終了した。
 政府内や電力業界からも、突然の補助金の再開方針に疑問の声が上がる。電力大手幹部は「足元でLNG価格は下落しており、政策の整合性が取れない」と指摘する。業界を所管する経済産業省内でも「補助金は政局に左右され、われわれの判断ではどうしようもない」と、定まらない対応に困惑顔だ。
 年内継続の方針を示したガソリンなど燃油価格の抑制策も終了時期を見通せない。22年1月に開始した燃油補助は、ウクライナ危機などを背景とした原油高への対応策として延長を重ねてきた。予算総額は既に6兆円を超え国の借金は膨らみ続けており、つけは将来の国民に回ることになる。
 化石燃料への補助は世界の潮流である脱炭素に逆行するとの批判もある。ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは「場当たり的な再開や延長を避けるため、開始と出口の条件を明確化するべきだ」と指摘した。