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医療発達、追い付かぬ法 識者「抜本的見直しを」   性別変更女性、「父」認知


医療発達、追い付かぬ法 識者「抜本的見直しを」   性別変更女性、「父」認知 最高裁判決後の記者会見で質問に答える仲岡しゅん弁護士=21日午後、大阪市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 生殖補助医療が発達し、性の在り方も多様になる一方で、生まれた子の親子関係が問題となるケースが相次ぐ。背景には法整備が追い付いていない現状がある。男性から性別変更した女性を「父」として認知するよう求めた子に対し、最高裁は21日に現行法の解釈で認知できるとの判断を導いた。専門家は「家族の在り方を規定する法律について、抜本的に見直すべきだ」と指摘する。

柔軟解釈

 「子の福祉を考慮した常識的な判断だ」。次女側代理人の仲岡しゅん弁護士は判決後、大阪市内で開いた記者会見で最高裁判決をこう評価した。「父」を男性に限る規定は民法にも戸籍法にもないとし「柔軟に解釈して運用していくべきだ」と訴えた。
 性同一性障害特例法に基づき性別変更した当事者と生まれた子の親子関係が裁判で争われたケースは過去にもある。女性から性別変更した男性と、男性の妻が第三者提供の精子で生んだ子の親子関係が争われた訴訟で、最高裁は2013年、男性を法的に父と認める決定を出した。
 男性と子に血縁関係はないが、民法は「妻が結婚中に妊娠した子を夫の子と推定する」と規定しており、最高裁は性別変更したこの男性にも適用されると解釈した。

不合理

 一方、今回の訴訟では、男性から性別変更した40代女性と次女の間に血縁関係があることはDNA型鑑定で証明されている。女性も次女も共に認知を望んでおり、論点は女性を法的に父と認められるかどうかの一点だった。
 21日の判決は、親子関係の存否は子の福祉に深く関わるもので、血縁上の父の法的性別が女性であることを理由に認知できないのは、子の福祉に反すると指摘。性別変更の時期など親側の事情によって親子関係の存否が決まる不合理は許されるべきでないとした。
 家族法制に詳しい棚村政行・早稲田大名誉教授は、今回の訴訟は現行法内の枠組みで救済できたものの、問題の根源は、親の性が多様化し、生殖補助医療などの技術も著しく進歩する現状に、法が追い付いていないことにあると見る。
 棚村名誉教授は「民法が想定していない家族の形は現に存在しており、対症療法的な判断の積み重ねでは限界がある。婚姻や親子など、家族を取り巻く法律の抜本的な見直しが急務だ」と話している。