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「岸田降ろし」顕在化 3年前と逆の構図に  菅前首相ら政権批判


「岸田降ろし」顕在化 3年前と逆の構図に  菅前首相ら政権批判 2021年9月、自民党総裁選を終え開かれた両院議員総会の壇上で、菅首相(当時、左)と手を取り合う岸田新総裁=東京都内のホテル
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 通常国会の閉幕を待っていたかのように、自民党内で岸田文雄首相の交代論が噴き出した。政治資金規正法を改正しても裏金事件の逆風はやまず、内閣支持率の長期低迷から脱却できない首相に対し、非主流派のキーマンである菅義偉前首相らの間で危機感が拡大。「岸田降ろし」が顕在化した。「ポスト岸田」に誰を据えれば次期衆院選で勝てるか。9月の党総裁選をにらんだ駆け引きが始まった。

号砲

 「岸田首相自身が裏金事件の責任に触れずに今日まで来ている。そのことに不信感を持っている国民は結構多い」。菅氏は23日公開のインターネット番組で、支持率低迷の原因を分析した。
 首相が率いた岸田派(宏池会)では、元会計責任者が規正法違反の罪で略式起訴された。にもかかわらず、4月の一斉処分で首相は対象から外れた。野党は「なぜトップが免れるのか」と批判を次々浴びせたものの、首相は一顧だにしなかった。閣僚経験者は「その付けが回ってきた」と手厳しい。
 菅氏は、首相交代を念頭に「党が変わったという雰囲気をつくることが大事だ」と強調し、総裁選が「大きな節目になる」と踏み込んだ。菅氏に近い中堅議員は「まずは号砲を鳴らした。これから次の動きが出てくるだろう」と予測する。

既視感

 官邸筋は「3年前のデジャビュ(既視感)を覚える」と語る。
 2021年当時、首相だった菅氏は新型コロナウイルス対応に追われ、支持率も低く求心力を失っていた。そんな菅氏に対し、弓を引いたのが非主流派だった岸田首相。菅政権に関し「政治の根幹である国民の信頼が崩れている」と訴えて総裁選出馬を表明し、菅氏は不出馬に追い込まれた。
 皮肉にも今、逆の展開になろうとしている。
 菅氏以外では、茂木派の東国幹衆院議員が地元・北海道旭川市の党会合で「岸田首相はゆめゆめ『総裁再選』などと軽々しく口にせず、思いとどまってほしい」とぶち上げた。
 麻生派の斎藤洋明氏は首相の責任に言及した。安倍派を退会した高鳥修一氏も「リーダーや大将は部下を守るため、責任を負うものだ」と力説。首相が再選を果たして衆院解散・総選挙に打って出れば、自民の単独過半数維持は難しいと危惧する。
 厳しい目を向けられる首相は24日午後、親しくする遠藤利明前総務会長と官邸で50分近く会談した。終了後、記者団の前に現れた遠藤氏は、まるで再選への不安を打ち消すように、首相の様子について「とにかく元気だった」と繰り返した。
 しかし額面通りに受け取る向きは少ない。執行部の一人は「結局は菅さんと同じ道をたどるか、総裁選出馬にこぎ着けても敗れるかもしれない」と踏んだ。