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大阪地裁 「黒川氏の定年延長目的」 法務省協議 開示命じる


大阪地裁 「黒川氏の定年延長目的」 法務省協議 開示命じる 黒川元検事長を巡る経過
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年を延長した2020年1月の閣議決定前に、法務省内で協議した記録を不開示とした国の決定の当否が争われた訴訟で大阪地裁は27日、大半の決定を違法として取り消し、文書の開示を命じる判決を言い渡した。徳地淳裁判長は、閣議決定が黒川氏の退官予定のわずか7日前で、定年に関わる「(国家公務員法の)解釈変更は黒川氏の定年延長が目的と考えざるを得ない」と指摘した。(6面に関連)
 判決や訴状などによると、当時の検察官の定年は改正前の検察庁法で63歳(検事総長は65歳)と規定。政府は長年「国家公務員法の定年延長制は検察官に適用されない」との見解だったが、20年1月までに法務省が検察官にも適用できると解釈変更。当時の菅義偉官房長官に近いとされた黒川氏(当時62歳)の同2月だった定年の延長を政府が閣議決定し、野党などから次期検事総長に就かせるための「官邸の意向だ」と批判が出た。
 判決は定年延長が全国の検察官に周知されておらず、黒川氏以外に対象がいなかった点を考慮。約40年にわたり維持されてきた政府見解を直ちに変更すべき社会情勢の大きな変化があったとはいえず、解釈変更は「黒川氏の退官予定日に間に合うよう、ごく短期間で進められたと考えるほかない」とした。
 黒川氏は20年5月、新聞記者らと賭けマージャンをした問題が発覚し、訓告処分を受けて辞職。その後賭博罪で罰金20万円の略式命令を受けた。
 神戸学院大の上脇博之教授が21年9月、定年延長について協議した文書の開示を請求したが、法務省に文書を作成していないとして不開示とされ、22年1月に提訴した。
 訴訟で国側は解釈変更を示す文書の存在は認めたが、黒川氏のケースとは無関係として請求棄却を求めた。判決は文書の存否について、解釈変更に係る法務省内での協議文書に該当し保有していたとみられると判断。不開示決定を取り消した。
 一方、原告側の開示請求のうち法務省と安倍晋三内閣側との相談に関する文書は折衝があった証拠がないとして退けた。法務省は「判決内容を検討し、適切に対処する」とのコメントを出した。
 

 黒川元検事長定年延長問題 政府は2020年1月31日、黒川弘務東京高検検事長(当時)の定年を半年間延長する閣議決定をした。先例はなく、官邸に近いとされた黒川氏を次期検事総長にするための布石だと臆測を呼んだ。政府は国会で「定年延長は検察官に適用されない」とする従来の解釈を変更したと説明。定年延長を認める検察庁法改正案を提出したが、著名人や検察OBらが反対を表明し成立を断念。その後、賭けマージャン疑惑を週刊誌に報じられた黒川氏は訓告処分を受け辞職。市民団体から賭博容疑で刑事告発され、同罪で罰金20万円の略式命令を受けた。