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【深掘り】沖縄県民の危機感とかい離 再発防止策や情報伝達は不透明 米兵性的暴行続発


【深掘り】沖縄県民の危機感とかい離 再発防止策や情報伝達は不透明 米兵性的暴行続発 宮川学沖縄担当大使(左)に要請書を手渡す自民党県連の島袋大幹事長=29日、那覇市の県連会館
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米兵を被告とする性的暴行事件は昨年12月の事案に続き、今年5月に発生した事件についても報道で発覚するまで県に連絡はなかった。外務省が覚知していた一方、在沖米軍との渉外窓口である沖縄防衛局が知らされていなかったとするなど、省庁間でも情報把握の度合いが異なる。過程を明らかにすることにも消極的だ。情報提供がなされていれば、新たな被害を防ぐことができた可能性を指摘する声も上がる。日米は実効的な再発防止策を打ち出しておらず、事件の続発に危機感を強める県民とのかい離は明白となっている。

 12月発生の米空軍兵による少女誘拐暴行事件は6月25日に報道で明らかに。5月にも別の事件で米海兵隊員が逮捕されていたことが分かった。

■要請に説明なし

 12月の事件が伝えられておらず、県は再発防止の観点からも情報共有の必要性を訴えていた。県幹部は「注意喚起で防げたかは分からないが、犯罪防止活動は抑制につながるからこそやっているはずだ」と指摘。別の関係者も12月の事件が伝えられていれば「少なくとも新たな事件を抑える力にはなったはずだ」と無念さをにじませた。

 12月の事件の発覚後、県内政党が相次いで外務省沖縄事務所などに抗議。その際にも5月の事件について説明はなかった。県議の一人は「説明がないどころか『他にはない』と否定すらしていた。これを隠ぺいと言わず何を隠ぺいというのか」と強く問題視した。

 嘉手納基地の第18航空団司令官のエバンス准将とドルボ在沖米総領事が事件の説明で県庁を訪れた際も5月の事件には触れず。県関係者は「空軍側はともかく、総領事が知らなかったとは考えづらい」と首をかしげる。

■消極的

 事件が報道されて公になった後も、外務、防衛両省は事件をいつ把握したのかについて捜査や公判に与える影響を理由に明らかにしない。

 外務省の宮川学沖縄担当大使は、記者団に沖縄防衛局に伝えなかったのではないかと問われ「伝えた」としながら時期は明かさず。事件後早い段階か、報道後の連絡なのかで意味合いが大きく異なるが詳細は分からないままだ。防衛局の伊藤晋哉局長は同様の問いへの回答はしなかった。

 県は情報伝達の在り方について見直しを呼びかけるが、政府が重い腰を上げるのかは不透明だ。

 事件を受け外務、防衛両省は米側へ申し入れている。再発防止の具体策について木原稔防衛相は「まずは米側の対応をしっかりと待ちたい」と対策は米軍任せだ。「遺憾」を表明し「綱紀粛正」を求める紋切り型にも切迫感は伝わらない。

 米軍にも動きはない。米兵の勤務時間外の行動を規制するリバティー制度の厳格化について、18航空団は「時期尚早」と回答。事件は個別の兵員の問題とばかりに早期の対応には消極的だ。
(知念征尚、明真南斗、佐野真慈、沖田有吾)