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民主党、代替候補見当たらず ハリス副大統領も「不人気」   


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 高齢不安が指摘される米民主党のバイデン大統領(81)は27日の大統領選討論会で活力を示せず、共和党のトランプ前大統領(78)を相手に失態を演じた。米メディアでは候補差し替えの可能性に踏み込む論調が強まっている。ただ、有力な代替候補は見当たらず民主党は苦悩している。

嘆息

 弱々しい声、繰り返すせき―。討論会に登壇したバイデン氏は、声に張りがあった今年3月の一般教書演説とは対照的だった。「バイデン氏は年を取り過ぎだ。若くて熱意がある候補を擁立するしかない」。見守ったある有権者は嘆息した。
 CNNテレビは、バイデン氏にとっての「ニクソン・モーメント(場面)」と呼んだ。共和党のニクソン氏は1960年大統領選で、テレビ討論会で振るわなかったことが尾を引き、民主党のケネディ氏に敗れている。
 ニューヨーク・タイムズ紙も手厳しい。社説で「バイデン氏が今できる最大の奉仕は、再選を目指さないと表明することだ」と撤退を要求した。
 民主党はバイデン氏を候補に正式指名する方針を崩していないが、ニュースサイト、ポリティコは「討論会でのさえない結果が、状況を一変させる可能性がある」と指摘する。

対立

 候補変更はバイデン氏自らが決めた時だけにあり得るとされる。手続き上は難しくない。
 バイデン氏は各州などでの党員集会や予備選を通じ、8月19~22日に中西部シカゴで開く党大会で第1回投票に参加する代議員約3900人のほとんどを獲得している。不出馬を決めれば、代議員らは別の候補に自由に投票できるようになる。
 ハリス副大統領(59)が最有力だが、ポリティコは「人気が低いため、支持に迷う代議員もいるだろう」と指摘。複数候補の争いになれば、バイデン氏が抑えてきた党内のイデオロギー対立が表面化しそうだ。

観念

 バイデン氏以外の候補を立てても選対組織の構築は間に合いそうにない。全米規模で運動できる組織を持つのは、民主党ではバイデン氏だけだ。将来の民主党大統領候補に目される西部カリフォルニア州のニューサム知事(56)は「バイデン氏に背を向けることはない」と語った。党の有力者がバイデン氏を裏切る気配は今のところない。
 11月5日の投票日は約4カ月後。インターネットメディアVOXは「もう遅い」とし、民主党は観念するしかないと断じた。(ワシントン共同=武井徹、高木良平)