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任務拡大、増えるリスク 集団的自衛権容認から10年 自衛隊、米艦の防衛常態化


任務拡大、増えるリスク 集団的自衛権容認から10年 自衛隊、米艦の防衛常態化 集団的自衛権容認後の主な動き
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府が2014年に憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使容認を閣議決定してから1日で10年となった。これに基づき成立させた安全保障関連法により、自衛隊の任務は拡大。中国や北朝鮮の軍備増強も踏まえ、日米同盟による共同対処能力の強化が進む。自衛隊が米軍の艦艇などを守る「武器等防護」は常態化し、紛争の矢面に立つリスクは増加している。
 林芳正官房長官は1日の記者会見で「日米同盟はかつてないほど強固となり、抑止力・対処力も向上している。わが国の平和と安全の確保に資するものだ」と強調した。
 集団的自衛権は、他国への攻撃を自国への攻撃とみなして武力行使できるとするもの。歴代内閣は、憲法9条の許す範囲を超えるとして行使は認めないと解釈してきた。
 14年当時の安倍内閣はこれを変更し、密接な関係にある他国が攻撃され、日本の存立が脅かされるなどの「武力行使3要件」を満たせば、必要最小限度の実力行使は許容されるとした。
 法的に行使を可能にした安保関連法は15年に成立。22年には国家安保戦略などを改定し、他国領域のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を決めた。米軍に依存してきた打撃力の一端を自衛隊が担うことになった。
 安保法により他国軍への後方支援は米軍に限らず、日本周辺にも限定せず可能となった。武器等防護は23年、米軍を対象に22件実施。21年からオーストラリア軍にも実施し、23年は5件あった。
 中国や北朝鮮への抑止力強化に向け、多国間の共同訓練も増加。日米韓3カ国では対潜水艦や弾道ミサイル対処の訓練を重ね、先月下旬には海空やサイバー空間など複数領域を対象にした新たな共同訓練を開催。中国とフィリピンが領有権を争う南シナ海でも日米豪比で演習を行っている。
 米側には日本に一層の防衛力強化を求め、同盟・友好国の包囲網で中国や北朝鮮に自制を促す狙いがある。ただ、相手が挑発と受け取れば、逆に地域の緊張が高まる恐れも否定できない。