有料

機密費、全額使い切り 年12億円 元官房長官「選挙応援も」


機密費、全額使い切り 年12億円 元官房長官「選挙応援も」 2019年度から4年間の官房機密費入金と残高
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 官房長官が出納管理し使途が公表されない内閣官房報償費(機密費)に関し、2019~22年度の各年度で予算計上された約12億3千万円が全額引き出されていたことが分かった。年度内に使わずに国庫へ返納した額は最大で21年度の19万9174円。各年度、予算のほぼ全額を使い切っていた。
 19年4月~24年1月の入金と支出について共同通信が行った情報公開請求で明らかになった。官房長官経験者は選挙応援に使用したケースもあったと証言した。
 機密費は「国の事務を円滑かつ効果的に遂行するために機動的に使用する経費」とされる。会計検査院の検査を受けるが、支払先などは明らかにされず、国会のチェックも働かない。「機動的に使用」としながらもほぼ全額消化する対応には、不必要な用途に使っているのではないかとの指摘も出そうだ。機密費の不透明さが改めて露呈した形だ。
 開示請求した期間外に在任した元官房長官が共同通信の取材に応じた。機密費は主に首相や官房長官の判断で支出を決定。与党議員の選挙応援の際に陣中見舞いとして支出した経験があると明らかにした。
 国会対策や海外での情報収集、議員連盟の活動経費などに充て、北朝鮮による日本人拉致問題を巡り第三国での情報提供者への謝礼も含まれているとした。金庫は首相官邸の官房長官室にあり、現金で保管されているという。公開文書によると、19~22年度に機密費として官房長官に入金されたのは、いずれも12億3021万1千円。年度末の国庫への返納額は21年度以外では、19年度2万7396円、20年度13万6371円、22年度17万4462円だった。
 各年度とも「政策推進費」が9割以上を占める。官房長官に支出された時点で支出が完了し、その先は領収書も不要だ。公開された期間の月ごとの使用額は平均約1億187万円で、1億9千万円超使っていた月もあった。23年度は24年1月分まで公開され、入金、支出額とも例年と同じ傾向だった。
 開示請求した期間には菅義偉、加藤勝信、松野博一、林芳正各氏が官房長官を務めた。