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事故事件 不祥事底なし 防衛省・自衛隊、信頼失墜


事故事件 不祥事底なし 防衛省・自衛隊、信頼失墜 防衛省=6日午後
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 防衛省・自衛隊全体で特定秘密がずさんに取り扱われていた疑いが浮上した。自衛隊では近年、ハラスメントのほか、事故や事件が後を絶たず、防衛産業との癒着疑惑も判明したばかり。信頼失墜につながる問題が頻発する「底なし」状態で、専門家は「専守防衛をないがしろにして予算と役割を肥大化させてきたきしみが生じている」と警鐘を鳴らす。

ゆゆしき事態
 「同じ部隊や護衛艦の隊員なら話しても大丈夫だと、省内全体で著しい気の緩みや規範意識の欠如があったのではないか」。4月26日、防衛省内で開かれた特定秘密漏えいの再発防止検討委員会で、鬼木誠防衛副大臣が、居並ぶ各自衛隊幹部らに呼びかけた。
 検討委は1等海佐がOBの元海将に特定秘密を漏えいした事件を機に設置され、2023年3月に秘密に対する保全教育の徹底などの再発防止策を打ち出した。陸、海自で特定秘密の新たな不適切運用が明らかになったのは約1年後の今年4月。「積み上げてきた信頼を損なう、ゆゆしき事態」(岸田文雄首相)で、防衛省・自衛隊内で他に同様の事案がないかどうかの調査は急ピッチで進められた。

おごり
 7月1日に発足70年となった防衛省・自衛隊は、23年度からの5年間で防衛費の総額を約43兆円に増やすことが決まるなど、活動領域の拡大が続く。
 一方、組織の在り方を根底から覆す事故や不祥事が相次いでいる。
 元自衛官五ノ井里奈さんが実名で性被害を訴えたことをきっかけに実施したハラスメントに関する特別防衛監察では、1325件の申し出があり、6割以上が内部の相談員や窓口を活用しなかったと回答。組織の閉鎖性を浮き彫りにした。
 昨年4月と今年4月にヘリコプターの墜落事故が相次いで起き、計18人の隊員が犠牲に。
 昨年6月には陸自射撃場で自衛官候補生=当時=に隊員が銃撃されて死亡する事件もあり、社会に大きな不安と衝撃を与えた。
 今月に入り、海自潜水艦の修理契約に絡み、川崎重工業が捻出した裏金を原資とする金品などを潜水艦の乗員が受け取っていた疑惑も明るみに。再び特別防衛監察の実施も決まり、現場からは「もうぼろぼろだ。徹底的にうみを出して再出発するしかない」とのうめき声も漏れる。
 軍事評論家の前田哲男さんは「資格のない隊員による秘密の取り扱いが起きた背景には、防衛省内で、情報管理の枠組みづくりがうまく機能していないためではないか」と指摘。反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や多国間連携で自衛隊の活動範囲が際限なく広がっており「組織全体におごりが生じている証しだ」と断じた。