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旋風なく「失点回避」 政党不信、色濃く反映  都知事小池氏3選


旋風なく「失点回避」 政党不信、色濃く反映  都知事小池氏3選 3選を果たした小池百合子氏=7日夜、東京都新宿区
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 東京都知事選は、自民党などが支援した現職小池百合子氏(71)の3度目勝利となった。論戦は低調でかつての「旋風」はなく、他陣営は「失点回避の作戦」とも指摘する。自民の裏金事件で政治に対する信頼が失墜。政党に頼らない前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏(41)が一定の支持を得た一方、立憲民主党が支えた前参院議員の蓮舫氏(56)は苦しんだ。既成政党への不信が色濃く反映され、与野党に国政選挙への警戒感が漂う。 (1面に関連)

現状維持

 「熱い思いを届けていただいた。重責を痛感する」。7日夜、小池氏は支援者を前に喜びをかみしめた。
 選挙戦最終日の6日、小池氏は池袋駅前で「子育てしやすい東京にする」と演説。知事初当選の2016年もマイク納めはこの地を選んだ。自民側を酷評して百合子コール一色だった当時と異なり、今回は演説中に「やめろ」の声も目立つ。熱狂とは懸け離れていた。
 16年は積極的に街頭で声をからし、20年の前回選は新型コロナウイルス対策の公務に専念する「戦う知事」の姿を有権者にアピールした。今回は告示以降に街頭に立ったのは10回ほどと控えめ。選挙妨害に備えた警備負担が重いことも演説を絞った理由とされる。それでも選対幹部は「子育て政策の評価は高く、現状維持を望む層は、かなりいる」と余裕を見せた。
 蓮舫氏陣営からは「批判されるのが嫌で逃げた」「失点回避だ」と懐疑的な見方が浮上した。
 小池氏陣営は「自民隠し」にも腐心した。裏金事件が尾を引く自民から支援を受けながら「目立たれるとマイナス」(陣営)との判断で、自民議員らが応援演説に立つ場面は皆無。自民系都議は「支援者が事務所でまとまって電話作戦することはなかった」と明かす。

型にはまらず

 日増しに存在感を高めたのが「完全無所属」を掲げた石丸氏だった。15分程度の演説を毎日約10回こなした。政策の主張よりも、演説の様子を写した動画を交流サイト(SNS)で拡散するよう依頼したり「選挙を楽しみましょう。日本を動かしましょう」と呼びかけたりと、型にはまらない訴えに時間を割いた。
 「有権者はそれほど政策で候補を見ない。それよりも人柄や期待感だ」。石丸氏陣営幹部は戦略を率直に説明する。
 自民系区議は「政治の悪い慣習を壊してくれるヒーローと受け止められたのだろう」と解説。共同通信の出口調査では、無党派層の投票先として石丸氏がトップだった。
 野党が共闘し、発信力から「最強、最良の候補者」(共産党の小池晃書記局長)と称された蓮舫氏は、出馬表明当初「小池都政をリセットする」と勇ましかった。だが支持は広がらず「(主要な子育て政策を)引き継ぐ」と訴え、再び「リセット」に言及するなど揺れ動いた。陣営内に「発言がぶれている」と不満がくすぶり、立民が4月の衆院3補欠選挙で勝った流れに乗れなかった。

地殻変動

 有権者1100万人超の首都決戦で政党が支えた大物が伸び悩み、しがらみのない石丸氏に票が流れた。自民筋は、繰り返された「政治とカネ」問題を念頭に「既成政党への忌避感の表れだ」と警戒する。野党関係者も「自民だけでなく、立民を含めて政党にへきえきとしている層を石丸氏がつかんだ」とみる。
 衆院解散は常に取り沙汰され、来夏には参院選も控える。自民関係者は危機感をこう表現する。「反省して信頼回復に努めないと痛い目に遭う。地殻変動が起きている」