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防衛費1300億円使い残し 23年度、過去2番目規模 執行遅れ、増税難航も


防衛費1300億円使い残し 23年度、過去2番目規模 執行遅れ、増税難航も 防衛費と不用額の推移
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府が2023年度予算に計上した防衛費6兆8219億円のうち1300億円程度を使い残して不用額となったことが9日、分かった。防衛省発足後の07年度以降では、東日本大震災の特殊要因で約1800億円の不用額が出た11年度に次ぐ2番目の規模。一部では予算の増額に対して業務が追い付かず、執行の手続きが間に合わなかったとみられる。防衛力強化のための増税の議論にも影響がありそうだ。
 政府は防衛力強化に向け、23~27年度の5年間で総額43兆円程度の予算を投じる方針。財源を賄うため増税も実施する考えだが、多額を使い残している現状が改善されなければ、予算査定の甘さに批判が生じ、防衛増税の実施時期などを巡り今年末にかけての税制改正の議論が難航する可能性もある。
 防衛費増額の初年度となった23年度予算の防衛費は米軍再編経費などを含め6兆8219億円で、それまでの過去最大を更新した。しかし複数の関係者によると、増額に伴い契約や事業の実施が想定以上に増え、年度内に必要な支出を精査し切れなかったという。7月下旬にも決定する23年度の一般会計決算で不用額を計上する見込みで、執行し切れなかった一部は24年度予算への繰り越しも検討している。
 防衛装備庁の関連予算では、装備品が高額のため分割で支出するなど契約作業が通常の予算より難しいとされる。防衛費の不用額は20年度まで3年連続で1100億円を超え、22年度の決算でも1073億円を計上しているが、そのときは航空機の修理費が当初の想定より少なかったことなどが要因となった。
 防衛力強化を巡っては、予算執行をどう適正化していくかという課題がある一方で、安定財源をどう確保するかも問題だ。政府は歳出改革や決算剰余金、税外収入を財源に充て、残りを法人、所得、たばこの3税の増税や建設国債で賄う方針。特に増税は一時的な収入でなく恒常的な財源と位置付けるが、自民党の政治資金パーティー裏金問題などによる政治不信もあり、実施時期の決定は先送りが続いている。