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金額、対象範囲が焦点 被害証明の負担減、不可欠  


金額、対象範囲が焦点 被害証明の負担減、不可欠   超党派議員連盟の総会で、意見を述べる仙台訴訟原告の飯塚淳子さん(手前)=9日午後、国会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 強制不妊手術の被害救済に向けた議論が本格的に始まった。旧優生保護法を違憲とした最高裁判決を踏まえ、超党派議員連盟は新法制定を軸に、補償の枠組みを整える見通しだ。金額や対象にする範囲が焦点で、原告側は被害証明のハードルを下げるよう要望。障害のある人や高齢の被害者にも負担が少ない仕組みが不可欠となる。

苦難

 「最高裁で良い判決が出て、やっと希望の光が見えたが、苦しみは消えることがありません。早く解決できるよう、お力添えをお願いします」。9日の議連総会に出席した、仙台訴訟原告の飯塚淳子さん=70代、仮名=は声を詰まらせ、国会議員に一刻も早い救済を求めた。東京訴訟の北三郎さん(81)=仮名=も「二度と同じ過ちを繰り返してもらいたくない」と再発防止を訴えた。
 不妊手術を巡っては、手術を受けた本人のみに一律320万円の「見舞金」を支払う一時金支給法が2019年に施行された。一方、最高裁で確定した国家賠償請求訴訟判決は、本人への慰謝料は最大1500万円、配偶者は200万円と算定した。
 議連総会で弁護団は、本人についてはこの金額をベースにした枠組みを要望。一方、配偶者に関して、判決の水準では「味わった苦難に見合わない」として上乗せを求めた。亡くなった被害者も多く、遺族への補償が必要との立場を取った。

掘り起こし

 不妊手術を受けた約2万5千人のうち、一時金の支給認定を受けたのは約1100人にとどまり、被害者の掘り起こしが急務。被害の証明を、いかに負担のない形にできるかも課題となる。
 一時金の場合は都道府県へ申請し、政府の認定審査会が支給の可否を判断する。手術の明確な記録がなくても、医師による手術痕の診断書や、本人、家族らの説明を記した請求書により認定される手順だ。議連の一人は「一時金はそこまで認定を厳しくしなかった。今回も対象範囲は広くなると思う」とみる。ただ、議連内では「見舞金」とは異なる救済を行う新制度にするならば、現行の運用方法をそのまま使うのは「緩い」との見方があり、協議は難航も予想される。
 また、一時金申請が低迷しているのに、国はプライバシー保護を理由に被害者へ個別通知をしておらず、原告側は周知徹底を求めている。総会後、全国被害弁護団の新里宏二共同代表は、個別通知が欠かせないとした上で「これまでの申請主義を変え、(自治体担当者が)おわびをし、補償金の受け取りを求めるなど、被害者本人にしっかりと伝える努力が必要だ」と強調した。